弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

裁判例から医師の説明義務を考える(2)

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「検査,入院説得のための説明義務」について述べます.

医師の「療養指導としての説明義務」は,医師の管理下にないところでの患者の自己管理のためですが,「検査,入院説得のための説明義務」は,医師の管理が必要となったときに認められているものです.場面は違いますが,どちらも診療のために必要とされるものです.

患者が検査,入院が必要な病態のとき,医師は,患者に,検査,入院の必要性と検査,入院を怠ったときの危険性を説明する義務があるとされています.
患者は必ずしも自分の病態を理解しているわけではありませんので,医師が単に「検査を勧めます」「入院を勧めます」と言うだけでは.勧奨に従うとは限りません,医師は,具体的に必要性と怠ったときの危険性を患者が理解できるように説明する義務がある,とされています.

大動脈弁狭窄症が悪化していたのに患者が病状について誤解していた事案で,患者が自らの身体状態や必要な治療に対する評価について誤解していると医師が予見し得る場合,医師は患者の誤解を解くために十分な説明をする義務があるとされ,医師の説明義務違反が認められています(東京地裁平成18年10月18日判決).

C型慢性肝炎から肝臓がんに進行して死亡した事案で,医師が.患者に,C型慢性肝炎の予後が重大なものであるため,その治療が必要であると説明し,改めてC型肝炎ウイルス検査を受検するよう説得を試みることをしなかったことから,医師の説明義務違反が認められています(大阪地裁平成19年7月30日判決).

胃がんの見逃しや事案で,医師には本件造影検査の画像読影後速やかに内視鏡検査及び生検を含む精密検査をすべき義務があり,また,医師の医院には内視鏡検査等を行いうる機器がないため内視鏡検査等を自ら行いえないのであれば患者に対し内視鏡検査等を行いうる医療機関を紹介し精密検査を受検するよう指導すべき義務があったとし,義務違反が認められています(名古屋地方裁判所平成19年7月4日判決).

他方,レントゲン写真から肺がんを疑った医師の精査指示に対し,患者がこれを頑なに拒否し,肺がんで死亡した事案で,説得にもかかわらず検査を受けることを拒否したからといって,さらに家族を呼んで説得するまでの義務はない,とされています(大阪地裁平成18年4月7日判決).



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by medical-law | 2010-10-10 10:15 | 説明義務