弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

裁判例から医師の説明義務を考える(6)

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今回は,患者本人に説明せず,家族に説明した例について,述べます。

■ ロボトミー手術判決

慢性アルコール中毒症,爆発性・意志薄弱型精神病質の同意入院患者に対し,前頭葉白質切截術(ロボトミー)を患者の妻の承諾書だけで実施した事案があります.

裁判所は,「患者本人において自己の状態、当該医療行為の意義・内容,及びそれに伴う危険性の程度につき認識し得る程度の能力」があったと認定しています.
そして,前頭葉白質切截術(ロボトミー)については,その性格上,精神衛生法第 33 条による入院の同意手続きを得ていてもこれで足りるものではなく,その手術につき個別的に患者の承諾を要するものというのが相当である,と判断し,違法な手術であるとし,担当医師の不法行為を認めました(札幌地裁昭和53年9月29日判決)

なお,ロボトミー手術のような被験者の3分の2以上が予後不良とされるような危険な行為は,違法な人体実験的治療行為であり,同意要件にかかわらずそもそも実施されるべきではない,という見解もあります(加藤久雄「ロボトミー手術と精神障害者の自己決定権」,医事判例百選80頁).

札幌の高橋智先生のブログの「お奨め映画 vol2・「カッコーの巣の上で」〜ロボトミー事件〜」http://www.takahashi-law.com/news/2009/03/-vol.html もご参照ください.高橋智先生は,真駒内小学校の後輩ですが,弁護士としては先輩です.

■ 姉,夫への説明で実施した手術が違法とされた例

閉腹して患者に説明することも可能な事案で,患者の姉への説明と同意で緊急性のない手術を実施した事案(広島地裁平成元年5月29日判決),閉腹して患者に説明することも可能な事案で患者の夫への説明と同意で緊急性のない手術を実施した事案(東京地裁平成13年3月21日判決)で,患者への説明がなかったことから違法な医療行為とされています.

緊急性が高いときは,例外的に患者本人への説明義務が不要とされる場合があります(頭蓋骨陥没開頭手術の事案,最高裁昭和56年6月19日判決).


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by medical-law | 2010-10-22 10:24 | 説明義務