弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

来年の日弁連人権擁護大会のテーマ

b0206085_21521597.jpg来年の日本弁護士連合会の第54回人権擁護大会(高松)で,患者の権利で一枠シンポジウムが組まれることになったそうです.

「患者の権利」を取り入れた医療基本法制定の流れと連動して,適切なタイミングだと思います.

患者のための医療法律相談」(法学書院刊)にしたがって,患者の権利について簡単に述べます.

◆ 患者とは

患者とは,ヘルスケアを求める人のことを言います.
ヘルスケアとは,健康の推進と予防,疾病の予防,検査,診断,治療,リハビリ等を含む幅広いサービスです.ですから,患者には,障害を抱えている人,末期的な状態にある人だけではなく,健康状態が優れている人も含まれます.

医療法第1条の2は,「医療は,医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに,その内容は,単に治療のみならず,疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない」と定めています.

「患者の権利」には,「基本的人権としての患者の権利」と「診療契約上の権利としての患者の権利」があります。

◆ 「基本的人権としての患者の権利」(国等と患者の関係)

日本国憲法13条,25条は,患者の人格が尊重されるとともに,患者が自らの意思と選択のもとに最善の医療を受けることができる権利を保障していると考えられています.基本的人権は,国または国と同じような力をもつ社会的権力に対し主張できます.
憲法の趣旨を具体化した医療基本法が制定されると,国は,患者の権利を保障するための医療制度をつくることなど,具体的な義務を負うことになります.

◆ 「診療契約上の権利としての患者の権利」(医療機関と患者との関係)

病院などを受診しますと,「患者」と「病院などの医療機関の開設者」との間に診療契約が結ばれたものと扱われます.
例えば,市民病院を受診すると,患者と市(市民病院の開設者)との間に診療契約が成立します.

この「診療契約上の患者の権利」の内容は,「基本的人権としての患者の権利」に沿うものでなければなりません.

患者は病気を治してもらうために医療機関を受診しますが,病気は絶対に治せるというものではありませんので,治癒を約束することはできません,そこで,診療契約の内容は“治癒を目標に最善の注意義務をもって全力で診療を行うことを約束した”ものと考えられています.
裁判所は,「診療の高度の専門性・特殊性に照らし,患者が希望する診療目的の達成を目標として,診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準を基準とする危険防止のため経験上必要とされる最善の注意義務をもって診療を行うべき義務」を負っている,と判断しています,
具体的には,
(1)開設者は,患者の意思に従い,誠実に最善の医療を提供する義務を負っています.
(2)医療の専門家でない患者が,自分で医療について選択,決定できるように,丁寧に説明する義務も負っています.
(3)開設者は,どのような診療が行われたかを患者に報告する義務も負っています.
(4)自分のところで十分できない診療については,それができる医療機関への転医・転送義務もあります.

なお,愛知県弁護士会のホームページで,診療契約についてモデル契約書 を見ることができます,

 「第1章は、総則で、医療機関が負うべき最善の医療を提供する義務、患者の権利を擁護する義務、研鑽義務、転医・転送義務、プライバシー保護義務と患者が負うべき診療報酬支払い義務が記載されています。
 第2章は、契約の終了について記載されています。
 第3章は、インフォームドコンセントに関して、医師の説明・報告義務、転医の機会を与えるための説明義務、顛末報告義務の内容を具体的に記載し、説明や同意の方法、患者自身に同意能力が欠如した場合の同意権者の指定などについて記載しています。
 第4章は、診療録の閲覧と写しの交付などの具体的手続きを記載しています。
 第5章は、紛争の解決です。立証責任転換合意と患者の希望によっては、弁護士会が設立しているあっせん・仲裁センターにおいて紛争を解決することについての合意を記載しています。」

このモデル契約書は,患者が,権利として何をどこまで求めることができるか,がこのように具体的に書かれています.

◆ 患者の義務

患者は,治療費を支払う義務を負います.
ただし,開設者は,患者に治療費の前払いを請求する権利はありません.治療費は後払いです.

◆ 義歯製作,矯正などの場合

義歯の製作や矯正治療などは,義歯の製作や矯正という仕事の完成を目的とする契約とみなす考え方も有力です.この考え方によると,建物建築請負契約のように仕事をきちんと完成させる義務(結果に対する義務)があることになります.


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by medical-law | 2010-11-20 21:56 | 医療