弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

『討論!医療訴訟の準備・対応について裁判官と双方代理人』(1)

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写真は,長崎の猫です.

穏やかな小春日和が続いていますが,11月はシンポジウムの多い時期でもあります.
先週末から
26日「薬害イレッサ総決起集会」,
28日「第19回国民の医薬シンポジウム『薬害の被害者救済と根絶の達成を~薬害肝炎検証委員会の提言をもとに考察する~』」,
29日「東京三弁護士会医療関係事件検討協議会シンポジウム『討論!医療訴訟の準備・対応について裁判官と双方代理人』」
にそれぞれ出席しました.

イレッサ,国民のシンポジウム(とくに薬害肝炎の提言)については,また後に書く機会があるでしょうから.今日は,『討論!医療訴訟の準備・対応について裁判官と双方代理人』について書きます.

パネリストは,細川大輔先生(患者側弁護士),森谷和馬先生(患者側弁護士),児玉安司先生(医療側弁護士),小西貞行先生(医療側弁護士),秋吉仁美判事,村田渉判事でした。司会は大森夏織先生(患者側弁護士),木ノ元直樹先生(医療側弁護士)でした。そうそうたるメンバーです.

◆ 患者側弁護士のお話

細川先生,森谷先生から,「患者側代理人の訴訟前活動」のお話がありました.

細川先生は,調査活動の意義として,①提訴後のスムーズな主張・立証活動,②提訴可能事案と断念事案との見極め,③真相究明と患者・遺族の納得をあげていました.

私は,調査を単なる訴訟の準備段階のようにとらえることには反対で.提訴に向かわない事案を「断念事案」と言うことにとても抵抗を感じます.

調査は,単なる提訴・非提訴の振り分け,訴訟の準備ではありません.
調査によって,依頼者の疑問が氷解し,紛争が解決することもあります.
調査の第一の目的は.(もちろん.際限なく真実調査を行うことはできませんので,入手できる資料に基づくものですので,限界はあるにしても)基本的には事実関係を明らかにすることで紛争解決を目指すものです.
法的責任追及の可能性について,法的観点からその見込みを判断することも目的の1つです.しかし,責任があるのではないか,という先入観をもって調査にあたるのは正しくありません.白紙の状態で客観的に調査する必要があると思います.
そして,調査の際にも.依頼者をないがしろにすることなく,依頼者が事案についてどのように理解し,どのようなことを望んでいるのか,その真意を把握することも重要で,それによって調査のポイントも変わってくる,と思います.

細川先生は,具体的に,1)診療記録の入手・検討,2)医学文献調査,3)協力医意見聴取,4)求説明交渉について話されました.
これに事故調査申し入れ,依頼者の気持ちの確認をくわえると,調査の過程が網羅されます.

細川先生から,求説明交渉について,「相手方の反論を考慮しなければ,提訴の可否は判断できない」という理由が述べられました.
たしかにそのとおりですが,責任追及を考える以前に.医師の説明がなければ,具体的な事実が分かりません.医師がその医療行為についてどのように考えたのかが分からなければ,医療行為に合理性があるかも分かりません.提訴検討とは切り離して,求説明は,事実を知るために絶対的に不可欠と思います,

調査のポイントとして.細川先生から,1)過失・因果関係・損害の各項目について,これを裏づける医学知見が得られているか,2)医学知見の当てはめに問題はないか,の2点があげられました.
森谷先生から,死亡事案における機序の重要性,被害内容を客観的に証明できるものが必要,交渉に値するか,着地を考える,などの補足説明がありました.

訴訟の前段階としての調査,訴訟準備としての調査のポイントとしては,それでよいのでしょうが,前述の調査目的からすると,これに尽きるものではないでしょう.

今回のテーマが「医療訴訟の準備・・・」というものでしたので,このテーマにそって,訴訟になった事件について,ふりかえって調査をみれば.このような理解になるのでしょう.細川先生のお話は,その意味で,誤りとまでは言えませんが,医療訴訟の準備という面が強調されていて,紛争解決のための調査という側面がみえにくく,やや誤解を与えそうな気がしました.

◆ 医療側弁護士のお話

児玉先生と小西先生から述べられたことは.医療機関側の代理人の多くは経験豊富ですので,紹介を省略します.
児玉先生が,公正な対応を強調し,また人間模様からスタートする,と述べられたのが大変印象的でした.
小西先生から示された,「医療訴訟 過失・因果関係整理票」は,若手の患者側弁護士には有益なものと思います.

言うまでもなく,法曹の役割は,紛争を解決することにあります.いたずらに訴訟にすることは,紛争の激化を招きますので.提訴は慎重でなければなりません.双方代理人の適切な活動により,訴訟外での適正な解決をできるだけ追求,実現すべきと思います.

これに続く裁判官のお話とパネリストの討議は興味深いものがありましたが,長くなりましたので,明日述べましょう.


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by medical-law | 2010-11-30 22:32 | 医療事故・医療裁判