弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

糖尿病薬インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の問題

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インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)は,アメリカドクトカゲにヒントを得て食後の血糖値を上がらないようにした糖尿病の新しい治療薬です.
検査値が健康な人と同じくらいまで低く抑えられるとして,注目されています.
しかし,低血糖,.高血糖,心疾患リスクについて安全性が確認されていると言える薬ではありません.

インスリン療法を中止してGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名ビクトーザ)に切り替えた症例で糖尿病ケトアシドーシスを発症し死亡した2例のほかに,著明な高血糖をきたした7例が報告されています.

「インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会」 は,12月17日,次の【追記情報】を発表しました。

「GLP-1受容体作動薬に分類されるエキセナチド(12月17日発売「バイエッタ」)はインスリンの代替とはならない」
「エキセナチドは適応がSU薬併用(ビグアナイド系薬剤又はチアゾリジン系薬剤との併用を含む)となっているため、低血糖についての注意も必要である。国内臨床試験においては、1回5μgでの投与開始時、及び1回10μgへの増量時に低血糖の発現頻度が増加する傾向が報告された。」
「エキセナチドは透析患者を含む重度腎機能障害のある患者では禁忌となっている。 軽度、中等度の腎機能障害のある患者においても臨床試験の結果から低血糖の発現割合が高い傾向が報告されることから慎重に投与する必要がある。」

薬害オンブズパースン会議は,12月24日,厚生労働大臣宛に「糖尿病治療薬インクレチン関連薬に関する要望書」を提出しました.
以下の2つの問題を指摘しています.
 ① DPP-4阻害薬(ジャヌビア錠・グラクティブ錠)使用症例で生じた低血糖や重篤な低血糖による意識障害に関する問題
 ② GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ皮下注)使用症例で生じた糖尿病ケトアシドーシス(死亡事例2)や顕著な高血糖の問題

そして,安全性に関する詳細な調査を行い,機序を解明して,対策を講じるべきである,としています.

また,米国のFDA(食品医薬品局)が,糖尿病新薬に,心血管系へのリスク評価のための臨床試験を承認前に求めているのに対し,日本のガイドラインはこれを求めず,製造販売後の調査(努力目標)に委ねるとしています.
要望書は,「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に,心血管系疾患のリスク評価のための臨床試験を加えるべきである,としています.

とくに,血糖降下薬は,心血管系疾患に対する抑制効果を証明できていない(かえって心血管系疾患のリスクを高める可能性を有している)にも拘わらず,リスク評価がなされていないことを指摘しています.

さらに,要望書は,承認済みのインクレチン関連薬には製造販売後の臨床試験の実施を求めています.

谷直樹
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by medical-law | 2010-12-29 22:17 | 医療