弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「イレッサ訴訟で和解勧告」

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東京地裁と大阪地裁は,被告国と製薬企業に責任があるとして,和解を勧告したそうです.

18時のNHKニュースは,つぎのとおり,伝えました.

イレッサ賠償訴訟 和解を勧告1月7日 18時0分

重い副作用が相次いだ肺がんの治療薬「イレッサ」の投与を受けて死亡した患者の遺族らが、国と製薬会社アストラゼネカに損害賠償を求めている裁判で、裁判所は「国と製薬会社には、患者らの救済を図る責任がある」と指摘し、原告と被告の双方に和解を勧告しました。

6年前に始まった裁判で、国と製薬会社は全面的に争う姿勢を示してきましたが、東京地裁と大阪地裁は、7日午後、原告と被告の双方に和解を勧告しました。勧告の中で裁判所は「製薬会社がイレッサの重い副作用を警告する情報を出した平成14年10月より前に投与を受けたケースでは、国と製薬会社は救済を図る責任がある」と指摘したうえで、国などに対して和解金を支払うなどして裁判を解決するよう求めています。原告と被告は、28日までに和解勧告を受け入れるかどうか、裁判所に回答することになっています。イレッサは、9年前に日本で世界に先駆けて承認されましたが、副作用によるとみられる肺炎などによって患者が死亡するケースが相次いで報告され、厚生労働省によりますと、去年9月末までに819人が死亡したということです。31歳の次女がイレッサを服用して死亡した原告団の代表の近澤昭雄さん(67)は、記者会見で「和解勧告がようやく出てほっとしています。国や製薬会社は、がん患者の命の重さを理解して救済に向けて勧告を受け入れてほしい」と述べました。また弁護団は「国や製薬会社の責任を明確に認めた点で画期的だ」と評価したうえで、「国や製薬会社とは、原告以外の患者も含めて全員が救済されるよう協議していきたい」と述べました。一方、大阪・北区の製薬会社「アストラゼネカ」は、和解勧告について「勧告内容を吟味したうえで決定したいと考えています」というコメントを出しました。」

この訴訟のだいぶ前になりますが.私は,イレッサを服薬し,間質性肺炎で亡くなった方のご遺族から,急激に悪化した経緯,良かれと思いイレッサを勧めた複雑な心中をなど聴かせていただいたことがあります.アストラゼネカは,藁にもすがる思いのがん患者と家族に対し本当に酷なことをするものだ,と思いました.

安全性の確認を怠り,副作用のない夢の新薬として売り出した製薬企業アストラゼネカの責任は大きく,また,それを容認した国の責任も大きいものといわざるをえません.さらに,イレッサを擁護し続ける医学・薬学研究者の姿勢も疑問と思います.
819人が死亡したイレッサ薬害については,「抗がん剤の副作用一般」の話に矮小化することはできないでしょう.

2月25日に大阪地裁で,3月23日に東京地裁で,それぞれ判決が予定されていますが,和解で解決することで,イレッサ薬害死を無駄にすることなく,真摯な謝罪,損害賠償,抗がん剤による副作用死を対象にした被害救済制度の創設などにつなげてほしいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-07 20:33 | 医療事故・医療裁判