弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

イレッサ訴訟,「和解勧告及び所見」の正確な内容

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東京地裁と大阪地裁の「和解勧告及び所見」は,決して,承認後に副作用による多数の死亡が発生した事実に基づき事後的に承認を違法と判断するものではありません.
承認前から,個人輸入などによる副作用情報等から,間質性肺炎で死にいたる危険性が分からなかったわけではないこと,承認前に分かっていた危険性を的確に伝えなかったことを問題にしています.

朝日新聞は,1月14日,「イレッサ和解勧告『治験以外の副作用、検討必要だった』」と報じました.

「朝日新聞が入手した『和解勧告及び所見』では、薬として販売承認を得るための国内臨床試験(治験)以外で発生した副作用情報の扱いについて、見解を示していた。治験以外の、個人輸入などによる副作用情報も、国が慎重に検討していれば、間質性肺炎で死にいたる危険性も『読み取ることができなかったとはいえない』と指摘。医師向けの薬の説明文(添付文書)で、注意喚起に不備があったとした。

 イレッサ承認時の添付文書の『重大な副作用』欄では、間質性肺炎は重度の下痢、肝機能障害などに続いて、最後の4番目に記されていた。この点について『重要でないと読まれる可能性があった』と記述。最初に記した上で『致死的になりうることを記載するよう行政指導するべきだった』と指摘、国の責任に言及している。

 大阪地裁が東京地裁と同時に示した和解勧告でも、国は、治験以外でも間質性肺炎の情報が複数あったことなどから、『重大な副作用』欄への記載を指導するだけでなく、「より慎重な対応をとり得たのではないか」としている。」


国は,これで承認が遅れるとか,承認後に承認前には分からなかったことまで責任をとらされることになる,という趣旨のコメントを行っていましたが,このコメントは,裁判所の『和解勧告及び所見』を曲解するものだと言えます.
裁判所の『和解勧告及び所見』は正当であり,国は和解勧告を受け入れるべきと思います.

なお,全国保険医団体連合会もホームページに「薬害根絶のための検証と対策を――薬害イレッサ訴訟の和解勧告を歓迎する」 と載せ,「重大な副作用である間質性肺炎についての十分な注意喚起を行わず、薬害イレッサ事件を起こした国と製薬企業は、勧告を真摯に受け止め和解協議に応じるとともに、薬害根絶のための検証と対策に取り組むべきである。」としています.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-14 19:31 | 医療事故・医療裁判