弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

イレッサ,西日本新聞と読売新聞の社説

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薬害イレッサ訴訟は,国と製薬会社が和解を拒み,さらに長期化が予測されます.

薬は,承認前に治療効果と安全性について調べ,危険性を含め情報を的確に開示することになっています.それは,優先審査が行われたイレッサでも同じです,薬害イレッサ訴訟は,それができていたか否かが争点なのです.そして,尋問,証拠調べを行った東京,大阪の裁判所は,それができていなかったと判断したのです.
早期承認か安全性か,という対立ではありません.

28日の毎日新聞の社説の論評が的確ですが,29日の西日本新聞と30日の読売新聞社の社説もみておきましょう.以下,抜粋します.

◆ 29日の西日本新聞社説「イレッサ訴訟 悲劇のもとに何があるか 

 「新薬がどう働いて何に効くか、全容を解明したうえで副作用も詳細に調べていたら、承認にべらぼうに時間がかかる。迅速な承認を求める国民の声や行政の方針に逆行すると国は考えたようだ。
 しかし、話を少々広げすぎではと感じる。あくまでイレッサの承認過程と使用方法の問題である。800人以上の副作用死を防ぐ事前の手だてはなかったか

 イレッサは新時代の治療薬と前評判が高かった。がんに狙いを定めた新型の薬で効果は高く、副作用は少ない。手術ができない人や、再発して他に治療薬がない人には待望の薬だといわれた。
 だから、優先審査制度を使って通常1年余りかかる審査をイレッサは5カ月余りでパスした。副作用も発疹や下痢などが主で、間質性肺炎は『あらわれることがあるので』注意をという程度だった。

 だが、市販直後から間質性肺炎を含む肺障害の報告が相次いだ。3カ月後に重大な副作用として『警告』が出された。
 イレッサが有効な場合も、逆効果の場合もあった。当初から慎重に使っておけば副作用死は減らせたのではないか。
 素人から見れば、判断は性急で安全が十分考慮されたと思えない。裁判所が国などに責任ありとしたのもうなずける

 国は承認の誤りは認めないが、抗がん剤による副作用被害の救済制度などを検討するという。だが、求められているのは国の率直な反省だ。昨年4月には薬害肝炎の検証と再発防止に関する分厚い報告書も出た。過去の教訓をもっと生かしていかないと悲劇は繰り返される。」

◆ 30日読売新聞社説「イレッサ訴訟 国は副作用死の教訓を生かせ 

 「イレッサは、『副作用の少ない夢の新薬』といわれた錠剤で、2002年7月、世界に先駆けて日本で販売が始まった。申請から5か月のスピード承認だった。

 その際、添付文書の『重大な副作用』の4番目に致死性の肺炎が記されていたが、実際に副作用死が相次いだ。このため、厚生労働省は同年10月、緊急安全性情報を出し、肺炎の副作用を『警告欄』に記載するよう改めた。
 両地裁は、和解勧告の所見でこの点を重視した。緊急安全性情報が出されるまでにイレッサを飲んで肺炎を発症した患者について、『国と製薬会社に救済責任がある』と指摘した。
 これに対し、国は『適切な注意喚起を行った』と主張しているが、警告欄に記された後、死亡者が減少に向かったことも事実だ
副作用情報の提供が十分だったのかどうか、検証が必要である。

 国が和解を拒否した最大の理由は、副作用を重視し過ぎると、抗がん剤などの迅速な承認の妨げになる、との懸念があるためだ。
 だが、医薬品の承認を優先するあまり、安全性のチェックをおろそかにすることは、薬事行政上、あってはならない。
 厚労省は『がん治療の新薬について、安全性を確保しつつ、できる限り早期の導入につなげていくことが大切』との見解を示した。患者のために、それを実践していくことが肝要だろう。

 日本では、欧米で評価された医薬品全般についても、承認が遅れ、治療に使えない『ドラッグ・ラグ』が問題となっている。その解消も急務だが、やはり安全性への十分な配慮は欠かせない。」

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谷直樹
by medical-law | 2011-01-30 15:54 | 医療事故・医療裁判