弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「国民皆保険50周年~その未来に向けて」

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日本医師会主催の平成22年度医療政策シンポジウム「国民皆保険50周年~その未来に向けて」のレジュメと動画が日本医師会のホームページに掲載されています.

とくに, 二木立日本福祉大学教授の講演「医療への市場原理導入論の30年-民間活力導入論から医療産業化論へ」は,必見必読です.
パワーポイントなどは使わない,ということで,詳細なレジュメと資料がついています.

二木立教授は,民主党政権の「医療産業化」論は,医療への市場原理導入論の部分的復活であることを指摘しています.

民主党政権の医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業化するための施策について,①混合診療の拡大はごく限定的で,「数十億程度のマージナル」な市場拡大でしかない,②医療ツーリズムの市場予測は超過大,この分野の先進国に太刀打ちできない,③健康関連サービス産業は,1980~1990年代の失敗で決着済み,と指摘しています.マクロ経済的には,医療は「経済の下支え」で「成長牽引産業」は過大評価とのことです.

今後の見通しとして,混合診療全面(原則)解禁論等,医療への市場原理導入論はゾンビのように復活するが,医療への市場原理導入の全面実施はありえず,日本の医療制度の2つの柱(国民皆保険制度と非営利医療機関主体の医療提供制度)は,今後も維持される,とのことです.

医療への市場原理導入がめざす「二段階医療」化は,日本社会の統合性・安定性を損なう,公的医療費の拡大による日本医療の質の引き上げと医療へのアクセスの確保は,国民皆保険制度を守るだけでなく,日本社会の安定性・統合性を維持・向上させる上でも不可欠,と指摘しています.

詳細を知るには,二木立教授の『民主党政権の医療政策』(勁草書房,2011月2月10日発行)を読むとよいようです.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-18 15:54 | 医療