弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

規制仕分けにかけられる「一般用医薬品のインターネット等販売規制」

b0206085_22592013.jpg

◆ 規制仕分け

行政刷新会議は,3月2日,「規制仕分けの対象となる項目」として,12項目を発表しました.医療分野では,次の3項目が取り上げられています.

○ 一般用医薬品のインターネット等販売規制
○ 訪問看護ステーションの開業要件
○ 医薬品及び医療機器の審査手続

小泉政権がすすめた規制緩和が医療の崩壊をもたらしたことは,記憶に新しいところです.
医療分野における規制緩和は,医療分野への市場原理の導入を目的とするものです.医療を産業化することは,医療の公共的性格と相容れず,国民の医療を受ける権利を侵害する結果になります.規制緩和の動きには警戒が必要でしょう.

◆ 一般用医薬品のインターネット等販売規制に対する薬害被害者団体,消費者団体の意見
 
2011年1 月21 日の全国薬害被害者団体連絡協議会・全国消費者団体連絡会・主婦連合会・全国消費者協会連合会らの「一般用医薬品のインターネット販売に関する意見書- 安全性を無視した規制緩和に反対する-」は,以下のとおり述べています.

「20 0 9 年6 月の「改正薬事法」施行に伴い、省令により、一般用医薬品について、第3 類医薬品を除き、インターネット販売等が禁止されました。

「改正薬事法」の基本的理念は、専門家による実効性のある情報提供と相談対応によって、一般用医薬品の適切で安全な使用を実現しようとする点にあります。

2 0 0 4 年から2 0 0 7 年に医薬品副作用救済制度による給付が行われた2 74 3件のうち、原因薬剤に一般用医薬品を含むものは1 3 9 件( 5 % ) あり、一般用医薬品による健康被害の内訳をみると、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症など重篤な副作用被害が最も多く、少なくとも7 人が死亡して
いると報告されています。そして、原因薬剤の半数以上は、第2 類の総合感冒薬です。副作用被害救済制度の申請率の低さに鑑みれば、実際には一般用医薬品によって、より多くの副作用被害が発生していると考えられます。

一般用医薬品の安全な使用を確保するためには、対面販売が不可欠であり、対面販売を実現できないインターネット販売を禁止した省令は極めて適切です。

規制に反対するインターネット販売業者等は、高齢者や障がい者、離島居住者などの利便性が損なわれると主張していますが、むしろ、これらの方々に対してこそ、専門家の指導による適切な医薬品の使用が強く求められます。消費者が求める利便性は、あくまで安全を前提にしたものなのです。」


◆ 一般用医薬品のインターネット等販売規制に対する日本医師会の意見

日本医師会の意見は,以下のとおりです.

「・利便性を重視した規制改革は慎重な対応をすべきである。
・一般用医薬品の販売に際しては、薬剤師が責任をもって情報提供するとともに、必要に応じて医師への受診勧奨をすべきである。
・インターネット販売は、過剰な宣伝が問題視されている健康食品等の販売にも利用されており、広告表示方法によっては購入者が医薬品との区別がつかないおそれがある。さらに健康食品等と医薬品とは相互作用を起こすリスクもある。」
(2011年2月16日定例記者会見で配布された「「規制・制度改革に関する分科会中間とりまとめ(案)」ライフイノベーションWGの検討項目に対する日本医師会の見解」)

◆ 一般用医薬品のインターネット等販売規制に対する日本薬剤師会の意見

日本薬剤師会は,2月21日から,『一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和』に反対で,薬害被害者団体とともに、一般用医薬品のインターネット等販売規制緩和に反対する署名活動を行っています,
その理由は,以下のとおりです.

「 [1]医薬品は人の生命、健康に直接影響を与えるものであり、一般の商品とは全く異なります。だからこそ、その販売は薬事法によって厳しく規制されています。

 [2]インターネット販売は、販売者の匿名性が高いこと等から、責任の所在が明確でないことが多く、わが国では認めていない医薬品や、乱用薬物、出所の明確でない医薬品、医薬品まがいの健康食品などが、しばしば商品として販売されています。

 警察庁の調査によれば、乱用薬物のインターネット販売は増加の傾向にあるなど、Webサイト管理者の、こうした悪質な取り引きを排除する努力も十分とは見えず、また、単に場所を提供しているだけ、とその責任も否定しています。

 [3]このような無秩序、かつ、無責任なインターネット販売が横行する現状を無視して、生命関連商品である医薬品のインターネット販売の規制を緩和することは、極めて危険であるといわざるを得ません。

 全国薬害被害者団体連絡協議会、SJS患者会(一般用医薬品の副作用被害者)等、多くの被害者団体をはじめ、消費者団体は、医薬品のインターネット販売の規制緩和を強く懸念し、反対しています。

 [4]規制・制度改革分科会の中間取りまとめでは、「薬剤師または登録販売者などの有資格者を常駐させることは人件費コストを過大とする」としています。しかし、医薬品の適正使用、安全性を確保するために、「コスト」をかけることは、医薬品販売者としての当然の義務であり、社会的責任です。消費者のための安心、安全を無視して、自己の利益のみを追求する考え方には断固反対します。

 [5]2008年に一般用医薬品の、より安全な国民への提供という社会的要請を受けて、薬事法が改正され、その中で、国民への対面販売の重要性から、専門家の常駐を促進するため、薬剤師の他にリスクの少ない医薬品提供を担当する、登録販売者という新たな制度が導入され、現在、全国で約10万人ほどが生まれています。この事実を無視した議論は、まさに社会的要請をないがしろにするものといわざるを得ません。

 [6]政府の行政刷新会議やIT戦略本部は、医薬品のインターネット販売の規制緩和を議論する前に、生命関連商品である医薬品販売の場として、現在のインターネットが相応しいのか、薬害被害者たちの強い懸念をおしてまで、今、緩和の必要があるのか、Webサイト管理者の責任をどう考えるのかを含め、薬害被害者の意見を尊重し、時間をかけて徹底的な議論を行うべきであると考えます。」



このように,薬害被害者団体,消費者団体,医療団体などが規制緩和に反対の意見を述べています.
いずれも,説得力のある意見です.

更新の励みになりますので下記バナーのクリックをお願いします.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

谷直樹
by medical-law | 2011-03-03 23:02 | 医療