弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

予防接種B型肝炎訴訟と除斥期間

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予防接種B型肝炎訴訟は,国が20年の期間制限にこだわり続けているため,和解が進んでいません.

◆ 民法724条後段の20年の期間制限

国賠法は期間制限の規定をおいていませんので,民法が補充的に適用されます.
民法724条は,「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と定めています.
この民法724条後段の20年の期間制限は,「除斥期間」(Ausschulussfrist)であると解釈されています.

◆ 除斥期間(Ausschulussfrist)

「除斥期間」は,時効に似て非なる制度とされています.
古典的な学説(鳩山秀夫)では,除斥期間には,中断がない(反対川島武宣),停止がない(反対我妻栄),権利発生時から期間が進行する(反対判例)などが時効と異なるとされていました.

判例は,除斥期間について,時効と接近した解釈を行い.当該事案ごとに当事者の公平を図ってきました.

最高裁は,「当該損害の全部又は一部が発生した時」(最高裁平成16年4月27日判決(三井鉱山じん肺訴訟)),「水俣湾周辺地域から転居して4年を経過した時 」(最高裁平成16年10月15日判決(関西水俣病訴訟)),「B型肝炎を発症した時」(最高裁平成18年6月16日判決(北海道B型肝炎訴訟))などと解し,機械的に権利発生時から進行するとはしていません.

また,大阪高裁平成6年3月16日判決は.正義・公平の理念や条理に基づいて民法158条の法意に照らして民法724条後段の適用を制限しています.

◆ 和解と除斥期間

予防接種B型肝炎訴訟は,和解に基づき救済の仕組みを作ろうとしているわけですから,正義・公平の理念や条理に基づいて,20年の期間制限について柔軟に考えてよいはずです.

たとえば,ドミニカ移民事件の東京地裁平成18年6月7日判決は,入植した時点を除斥期間の起算点として除斥期間による権利消滅を肯定しましたが,謝罪し政治決着により1人あたり200万円から50万円を支払い解決しています.形式的な除斥期間を盾にとって被害者を切り捨てるのではなく,被害者全員の救済を図るべきでしょう.

予防接種B型肝炎訴訟原告団は「慢性肝炎の発症から20年以上が経過した被害者こそ、長期間にわたって肝炎被害を被ってきたのであり、その救済の必要性が大きい」と述べています.

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谷直樹
by medical-law | 2011-03-06 16:54 | 医療事故・医療裁判