弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医師が患者に勧める治療法は,医師が自分が患者になったときに選択する治療法と同じなのでしょうか?

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医師が患者に勧める治療法は,医師が自分が患者になったときに選択する治療法と同じなのでしょうか?

この点についての,デューク大学(ノースカロライナ州)のPeter A. Ubel博士の調査が,「Archives of Internal Medicine」4月11日号に掲載された,とのことです.
(ヘルスデージャパン「医師自身に対する治療選択肢は患者へのアドバイスとは異なることが多い」ご参照 ※ ただし,この標題は適切ではないでしょう.「多い」と言えるかは疑問です.)

◆ 第1の設例

Aは死亡率が高いが副作用が生じる可能性は少なく、Bは死亡率は低いが副作用が生じる可能性は高い,という場合,自分にはAを選択する医師は37.8%ですが,患者に対してAを選択する医師は24.5%であった,とのことです.
つまり,13.3%の医師は,自分については副作用を嫌って死亡率の高い方を選びながら,患者には死亡率が低い方を勧める,というわけです.わかる気がします.

◆ 第2の設例

新たな鳥インフルエンザによる死亡率は10%で,患者の30%が平均1週間入院する,治療を行うと有害事象の割合は半減するものの1%が死亡し4%に永続的な麻痺が生じる,というものです.「10%の死亡率」か「1%の死亡率+4%の永続的な麻痺が生じる可能性」の選択です.
この場合,62.9%が医師が自分については治療よりもインフルエンザに耐えることを選択するが,患者に治療しないよう勧める医師は48.5%に過ぎなかった,とのことです.
14.4%の医師は,自分の場合の選択と患者へ勧める選択が一致しません.

◆ まとめ

Ubel博士は「医師も患者もアドバイスは思うほど中立的でないことを認識しておく必要がある。よりよい方法は、医師と患者の双方が患者にとって重要なことについて議論を重ねることである。また、自身の金銭的利害や専門性、治療法などに対する医師側のバイアス(偏見)があるために、悪いアドバイスを与えることが多いという懸念もある」と述べている,とのことです.

自分の場合の選択と患者へ勧める選択が一致する医師の方が多いのですが.一致しない医師も結構いるわけです.
複数の選択肢がある場合,患者は,専門家である医師の推奨する選択肢を選ぶことも多いと思いますが,その医師の推奨はそのようなものと考えて,判断する方がよいでしょう.

自分の場合の選択と患者へ勧める選択が一致しなくても,それぞれの選択肢について的確に説明した上で,選択肢を勧めた場合は,説明義務違反にはならないでしょう,

なお,上記とは異なり,選択肢を全く説明していない,的確に説明していないなどの場合は,説明義務違反の問題が生じます.

谷直樹
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by medical-law | 2011-04-28 06:26 | 医療