弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

ビンラディン容疑者殺害は合法か?

b0206085_115235.jpgビンラディン容疑者は応戦しなかったそうです.

米国SEAL Team 6によるビンラディン容疑者殺害は国際法上合法なのでしょうか?


◆ ロイターの調査,79%が正しい

ロイターが英語サイト(www.reuters.com)を通じて行った「調査では、回答者の79%が米政府がビンラディン容疑者殺害を決定したのは正しい判断だったと回答。一方、正しくないと答えた人は14%、分からないと答えた人は7%だった。」そうです.
(ロイター「ビンラディン容疑者殺害、8割近くが正しい判断と認識=ロイター調査」ご参照)

一般の人の意見ですが,英語圏では「正しい」という意見が多いことに驚きます.

◆ 法律家の意見

朝日新聞は,法律家の意見を紹介しています.

「「ベルギー・ルーバンカトリック大学のピエール・ダルジョン教授は、この点について「本来は生きて拘束されるべきだった。国際法上、認められる殺害だったかどうかは微妙だ」と語る。
オランダ・アムステルダム大学のジャン・ダスプレモン准教授も「米側の行動がすべて国際人道法上の手続きにのっとったものだったのかどうか、今後、検証が必要だ」と指摘する。
国連の旧ユーゴスラビア戦犯法廷で判事を務めた法政大学の多谷千香子教授は、明らかに問題があるとする。「米国にとって危険人物なら、誰でも殺して良いことになってしまう」」
(朝日新聞「ビンラディン容疑者殺害 国際法上の問題、指摘する声も」ご参照)

国際法上明らかに合法とは言い難いようです.

◆ 冷泉彰彦氏,米国には成熟した刑事司法文化がない

冷泉彰彦氏は「ビンラディンのような大物を「裁く」ような成熟した刑事司法文化をアメリカは持っていない以上、殺すしかなかったのです。」と述べています.
「セキュリティの点だけでなく、「悪人に合衆国憲法による弁護人選任の権利を与えるのはイヤだ」などという保守派の「信念」は、国論分裂を招く一方で、とても国際社会に見せられたものではありません。」とのことです.
(Newsweek 「ビンラディン殺害「2つの疑問」とは?」ご参照)

米国の刑事司法文化の未熟さが,殺害を選択させた,ということです.
米国が人権保障の先進国であると誤解している人もいるようですが,米国は全体としては保守過激派の強い国であり,米国の刑事司法文化は未成熟である,と確認した出来事だったと思います.

【追記】
元西ドイツ首相のヘルムート・シュミット氏は「国際法に違反していることは明らかだ」と述べました.
弁護士のジェフリー・ロバートソン氏は,殺害は「冷血な暗殺行為であったことも考えられる」,「正義とは、(容疑者を)裁判にかけ,証拠に基づき判決を下すことだ」と述べました.
ロイター「ビンラディン容疑者殺害の必要性、欧州では疑問視する声も」ご参照

ピレイ国連人権高等弁務官は,国際法と照らし合わせる観点から「ビンラディン容疑者殺害に関する正確な事実を知りたい」との見解を示したとのことです.
毎日新聞「<ビンラディン容疑者殺害>国連人権弁務官「事実知りたい」」ご参照

作戦開始数分後,ビンラディン容疑者は米軍特殊部隊員に捕まり,家族の前で射殺されたと,12歳の娘が述べている,とのことです.
時事通信「米軍、生け捕り後に「処刑」?=ビンラディン容疑者の娘が証言-パキスタン紙」ご参照


ホルダー米司法長官は,ビンラディン容疑者殺害を山本五十六殺害と同じと述べました.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-04 01:03 | 司法