弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

奈良地裁平成23年5月17日和解(4000万円)報道,子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」による肺水腫死亡事案

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◆ 事案

医療法人社団清心会桜井病院で,切迫早産と絨毛膜羊膜炎と診断され,平成17年12月14日に入院した大淀町の妊婦(当時33歳)が,子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」などを投与され、副作用の肺水腫を発症し,せきや頻呼吸の症状があり,同月28日に死亡した事案です.

※ 肺水腫は,肺の中に余分な血液,水分がたまった状態です.胸部X線検査やCT検査で診断されます.


◆ 病院側の主張

病院側は拡張型心筋症の持病があった(心原性の肺水腫)と反論し,また,せきや頻呼吸の症状から塩酸リトドリンの副作用の肺水腫を発症していることを認識できない等の主張をしました.

◆ 塩酸リトドリン

「塩酸リトドリン」は,重篤な心疾患の患者には「禁忌」,心疾患の患者には「慎重投与」とされています.
「重要な基本的注意」として「本剤投与によって,肺水腫があらわれることがあり,急性心不全の合併に至った例もあるので,呼吸困難,胸部圧迫感,頻脈等に十分注意し,肺水腫があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。また,肺水腫は心疾患,妊娠中毒症の合併,多胎妊娠,副腎皮質ホルモン剤併用時等に発生しやすいとの報告があるので,これらの患者には,水分の過負荷を避け,十分な観察を行うこと。」とされています(薬の添付文書).

◆ 鑑定書

奈良地方裁判所が採用した,専門医による鑑定書では「副作用と判断し(塩酸リトドリンの投与を)中止すべきだった。中止したならば死亡する可能性は低い」というものです.

◆ 裁判上の和解

平成23年5月17日,奈良地裁で病院側が遺族に計4000万円の和解金を支払うことで裁判上の和解が成立したそうです.

なお,被告側の代理人弁護士は「診療の経過で大きな落ち度はなかった。せきなどの症状が副作用なのかは判断のしようがなかった」と述べたとのことですが,せきなどの症状が副作用かどうかを判断するために検査が必要で,その検査を行わなかったのですから,鑑定書に従えば,過失はあると言えるでしょう.

毎日新聞「妊婦死亡損賠訴訟:病院側と和解成立 被告側過失、言及せず--桜井 /奈良」ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-18 21:14 | 医療事故・医療裁判