弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋大学医学部付属病院小児外科で,平成22年7月の医療事故死(出血性ショック)公表

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◆ 名古屋大学医学部付属病院

名古屋大学医学部付属病院は,「医療の質・安全について」次のとおり宣言しています.

「「人は誰でも誤る(ミスを犯す)」「事故は起こるものである」ということを常に認識し、絶対の安全確保は不可能であるとしても、絶対の安心を提供するべく、日々努力します。誰が誤ったか(ミスを犯したか)ではなく、何が原因であったかという視点に立ち、個人の問題ではなく、組織の問題として、医療の安全性の向上を考えています。」

「2002年に発生した医療事故を原点にして、不幸にして、医療事故が発生してしまった場合には、「いかに患者様とご家族を守り、影響を最小限にするか」を最優先させ、力を尽くして治療に当たるとともに、隠さない(信用の保持)、ごまかさない(正確な情報)、逃げない(誠実な対応)の3原則を踏まえて、患者さんとご家族に対応しています。」


同病院は,このような考えに基づき,外部委員をいれた医療事故調査委員会を設置し,事故の原因を究明し,再発防止の役立てようとしています.
そこで,平成22年7月の小児外科の事故調査の結果を受けて,平成23年5月17日,病院長の記者会見が行われ,医療事故調査の結果が公表されました.

谷直樹
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◆ 事案

40代の小児外科医が,血管を傷つけた場合に出血を抑えるための器具を準備しないまま,6歳の患者の腫瘍の一部を切り取る検査を担当しましたが,剥離が難しかったことから,或いは再び開腹することなどの負担を考え,途中で主治医と相談することなく独断で全摘出手術に方針を転換し,大動脈を傷つけ,出血性ショックで死亡させた事案です.

細かい事実関係については,報道機関により微妙に異なります.

中日新聞によると

「病院では7月、開腹して腫瘍の組織を検査したところ、いったん良性と判断。だが、臨床的に悪性が疑われるため、主治医の小児科医が他の部位からの組織採取を小児外科医に依頼した。小児外科医ははく離が難しかったことから腫瘍の全摘手術に方針を転換し、腫瘍の切除を進めたが、何らかの原因で大動脈を傷つけたため出血。子どもは手術中に心停止となり、死亡した。」

時事通信によると

「児童は昨年7月、副腎にできた大きさ約20センチの腫瘍の一部を切り取る2回目の検査を受けたが、再び開腹することなどの負担を考えた小児外科医が途中で全摘出手術に方針を転換。その後、外科医が誤って膵臓(すいぞう)近くの大動脈を金属製の鉗子(かんし)で傷つけ、児童はその日のうちに出血性ショックで死亡した。」

読売新聞によると

「児童は昨年夏、背中から腹部にかけての腫瘍が見つかり、全摘手術を受けた。その際、背中側まで切除を進めたところ、何らかの原因で大動脈を損傷させたという。家族には「2、3時間で終わる」と説明していたが、児童は手術開始の約8時間後に大量出血し、その約4時間後に死亡した。」

毎日新聞によると

「児童は膵臓(すいぞう)近くに小児がんの一つ神経芽腫ができ、悪性と診断された。昨年7月、腫瘍の検査のため、小児外科医が開腹手術を執刀。腫瘍が良性という検査結果が出たことから、開腹を1回で済ませるため、腫瘍の全摘出手術に変更。しかし、大動脈を損傷させてしまい児童は死亡した。
手術には小児科医が立ち会っておらず、病院は「小児科と小児外科の十分な協議があれば、摘出が行われなかった可能性もあり死亡は回避できた。管理体制の不備だった」としている。」

NHKによると

「去年7月、当時小学1年生の6歳の子どもの腫瘍の組織検査のための手術が行われた際、執刀した40代の医師が、腫瘍を 取り除くことができると判断して、摘出手術に切り替えたところ、誤って近くの大動脈を傷つけ 、出血が多くなり死亡したということです。 病院の調査の結果、執刀した医師は、腫瘍の摘出手術に切り替えることについて、子どもの主治医の小児科医と十分な検討をしていなかった上、血管を傷つけた場合に出血を抑えるための器具を準備しないまま、手術を進めていたことがわかったということです。 」

◆ 事故調査委員会の結論

病院は昨年10月に外部識者をいれ事故調査委員会を設け,調査委員会は
「▽腫瘍の部分切除を考えてもよかった
▽家族に手術の危険性や経過を十分説明していなかった
▽検査手術について,小児科医と小児外科医との意思疎通に問題があった可能性がある-などと指摘し,
十分な準備があれば子どもの死亡を回避できた可能性がある
」と結論づけた,とのことです.

外部委員をいれた事故調査が普及すれば,医療事故の原因究明,再発防止に役立ちます,
そのためには,死亡等の重大事故については院内事故調査委員会設置を法的義務とすべきと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-24 00:24 | 医療