弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

長崎市立市民病院,胎児の心音モニターを85分間怠り,医療ミスを認める

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◆ 事案

長崎市立市民病院によると,30代女性が妊娠41週目の平成22年5月31日に入院し,同年6月2日午後9時20分ごろ胎児の心拍が一時低下しましたが,その後回復しました.
同日午後11時45分まで継続的に胎児の心音をモニターしましたが,異常はありませんでした.
その後85分間胎児心音をモニターせず,翌3日午前1時10分ごろ助産師がモニターしたところ,胎児の心音異常が確認されました.
午前2時半ごろ帝王切開しましたが,胎児は重度の仮死状態で,平成22年年11月23日に死亡しました.

病院の発表によれば,胎児の容体が急変したとみられる2日午後11時45分から3日午前1時10分までの後85分間は,医師が不在で,胎児心拍数のモニターを続けるよう明確な指示がなかったため,異常の発見が遅れ,そのことが事故の原因とのことです.

◆ 事故後の病院の対応

長崎市立市民病院は,平成23年5月31日,上記医療ミスを発表しました.遺族に賠償する方針とのことです.
鈴木伸院長は「約30分に1回は監視すべきだった.二度と繰り返さないようにしたい」と述べました.

 MSN産経ニュース「分娩でミス、男児5カ月後死亡 長崎市が家族に賠償へ」ご参照
 朝日新聞「心音検査怠り、胎児死亡=ミス認め、賠償へ―長崎市民病院」ご参照

【追記】その後,毎日新聞に記事が載りましたので追記します.
毎日新聞「長崎市民病院:死亡乳児家族に、事故の過失認め賠償へ /長崎
 「長崎市民病院(鈴木伸院長)は31日、胎児の検査をこまめにしなかったため仮死状態で男児が生まれ、約半年後に死亡したと発表した。市は過失を認め男児の家族に賠償する。

 病院によると、30代の母親が昨年5月31日に出産のため入院。6月2日午後9時過ぎ、胎児の心拍数が一時的に下がる「一過性徐脈」が起きた。すぐに回復し、検査で異常が見られなかったことから、診ていた女性医師は帰宅。同3日午前1時10分に再び胎児の心拍数が下がり、今度は回復せず、男児は帝王切開で仮死状態で生まれ、11月23日に死亡したという。

 通常、一過性徐脈の後は心拍数に異常がないかこまめに調べるが、女性医師が助産師にこまめな検査を指示せず、検査に約1時間半の「空白」があったという。鈴木院長は会見で謝罪し「今後は一過性徐脈後の検査の徹底や医師・助産師の勉強会開催など、再発防止を図る」としている。」
〔長崎版〕

◆ 感想

産科事件は,少ないときでも2,3件は担当している状況が続いています.賠償金額が大きくなるので保険会社が反対し,解決が長引くことも多いためです.

現在,胎児の状態を知るには,胎児心拍の連続的モニターが,(限界が指摘されてはいますが)依然として最も重要な方法です.胎児心音は一時改善することもありますが,モニターは続ける必要があります.

裁判では,モニターをつけていなかった間のいつ(何時何分に)急変したのか,仮にそのときモニターしていれば,帝王切開という判断になって結果は違っていたのか,など立証困難な点が争いになり,解決まで長くかかることもあります.
しかし,常識的に考えて,モニターしていないことが注意義務違反にあたる以上,病院の責任は肯定されるべきでしょう.

迅速な解決と今後の再発防止のために,長崎市立市民病院のこのような誠意ある対応は,高く評価されるものと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-01 00:27 | 医療事故・医療裁判