弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新潟県立中央病院,人工心肺装置の誤接続で空気注入事故,賠償金800万円

b0206085_6243114.jpg◆ 事案

新潟県立中央病院で,平成21年12月,急性大動脈解離で緊急手術を受けた患者(60代,女性)に,人工心肺装置の接続ミスから,心臓の血液が吸引されず,逆に1~2分間,空気が注入される事故がおきました.



病院によると,事故との因果関係は不明ですが,患者は,手術前後に脳梗塞となり,筋力低下や視野がぼやけるなどの後遺症を負いました.

患者は,平成22年3月に退院後もリハビリを続けています.

◆ 対応

矢沢正知院長は「患者やご家族に心からおわび申し上げる。再発防止に全力を尽くしていきたい」と述べました.
新潟県は賠償金800万円を女性側に支払う方針です。
県は関係者の処分を検討しているとのことです.

中日新聞「装置接続ミスで心臓に空気 新潟県立病院、女性患者に」ご参照

◆ 感想

賠償金800万円を支払えばすむというものではありません.担当者を処分すればそれですむというものではありません.事故原因と具体的な再発防止策を明示してほしいと思います.

平成21年2月23日に鹿児島大学病院で,人工心肺の空気誤送事故が起き,「人工心肺事故再発防止検討委員会報告書」,「人工心肺装置の安全使用に係わる検証委員会報告書」がまとめられ,同年8月3日には同病院のサイトに掲載されました.
「人工心肺装置の安全使用に係わる検証委員会」(6名中4名が外部委員)の「人工心肺装置の安全使用に係わる検証委員会報告書」には,次の点が明記されています.

「医療安全では研修の受講や演習だけではなく,能力管理が求められている.また,人工心肺業務は連続監視であり,役割分担も明確にする必要がある.」
「大動脈遮断解除などの重要な鉗子捜査は,指差し呼称による確認,ルートチェックが必須であり,機器操作の手順も明記する必要がある.」
「人工心肺標準マニュアルに空気誤送などの重大事故が起こったときの対処法の追記の必要がある.」


人工心肺装置使用中の空気誤送による医療事故の検証について」ご参照

さらに,日本心臓血管外科学会は,
「2011年9月10日開催の日本心臓血管外科学会理事会で,最近の人工心肺関連の医療事故に関して検討した結果,再発防止策(添付文書)を会員各位に安全情報として周知することを決定しました。さらに,2007年4月に日本体外循環技術医学会から発表された「人工心肺における安全装置設置基準」の勧告を会員各位に改めて周知し,必須項目(別記に抜粋)については迅速に導入し,安全装置の設置徹底を勧告します。」
と事故の再発防止に努めていました.

・人工心肺における安全装置設置基準 ・人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた安全教育等に関するガイドラインの確認と徹底のお願い 」ご参照

今回の新潟県立中央病院の接続事故は,外部委員を含む事故調査を行い,どのようにして起き,どこに原因があったのか,を示し,具体的な再発防止策を明示すべきと思います.

臨床工学士が接続を誤ったとのことですが,人工心肺における安全装置設置基準が守られていたのか,人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた安全教育等に関するガイドラインの確認と徹底が行われていたのか,病院の安全体制についての検証が必要と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-11 06:24 | 医療事故・医療裁判