弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

北大病院・慶大病院の患者情報漏洩紛失と共通番号制度

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◆ 北海道大学病院の患者情報漏洩紛失

北海道大学病院検査・輸血部の医師は,平成23年6月17日午後7時半から同9時45分ごろまで札幌市東区のパチンコ店駐車場に車を止めパチンコを終えて車に戻ると助手席の窓が割られ,ノートパソコンとハードディスクが入ったかばんが盗まれているのに気付いたとのことです.データは10年以上前から同病院に蓄積されていたもので,医師は「自分の研究のために集め自宅で整理するため持ち出した」とのことです.
同病院は,同月22日に、このことを公表しました.

その夜に,同病院の泌尿器科の医師が,同病院の指針に反し患者の個人情報を私有PCとHDに保存し,リュックサックに入れて職場の歓迎会で飲食しました.23日午前0時以降の記憶がなく、同6時ごろに札幌市中央区内のホテルの廊下で目覚めた時にはリュックがなかったとのことです.

北海道新聞「北大病院の患者情報盗難 医師、パチンコ中だった」ご参照
毎日新聞「北大病院:医師が泥酔 患者情報また紛失」ご参照

◆ 慶應義塾大学病院の患者情報漏洩紛失

慶應義塾大学病院は,27日、スポーツ医学総合センターの患者2万4459人の病名,生年月日,患者ID,電話番号,競技種目,来院日などが記録されたUSBメモリーを事務室内のキャビネットに保管していたが.6月17日にUSBメモリーがなくなっているのに気付いたとのことです.

時事 「患者情報、2万4千人分紛失=氏名、病名入りUSB-慶応病院」ご参照

◆ 患者情報の保護

これまでも,日本では数多くの患者情報紛失事件がおきていますが,補償金が支払われたことはないようです.
米国では,Health Insurance Portability and Accountability Actがあり,最高150万ドルの民事制裁金が課せられます.

大きな組織になれば,1人1人に徹底するのは困難になりますので,システムとして個人情報保護をはかる必要があるでしょう.
例えば,USBメモリーなどにコピーできなくするのがよいと思います.
暗号化した状態でなければコピーできないようにするのもよいと思います.

◆ 社会保障と税の共通番号制度と医療特別法

政府は,社会保障と税の共通番号制度を導入しようとし,共通番号を用いることの利便性のみを強調していますが,個人情報漏洩の機会が増え,その被害も甚大なものになります.
パスワードを共通にする以上に共通番号制度は危険です.政府は,情報漏洩の危険についてどのように考えているのでしょうか.

しかも,政府は,とくに医療について,特別法を用意して,情報保護を或る程度柔軟にしようとしています.

「大綱案によると、特に取り扱いに配慮が必要な医療情報については、個人情報保護法や、政府が制定する方針の番号法の特別法として、特性に配慮した措置を定める法制を整備する。法案の作成は、厚生労働省が内閣官房と連携しながら行う。
 特別法について向井治紀内閣官房審議官は、「具体的にはこれから検討する」とした上で、「(守秘義務を)厳しくしないといけないが、あまり厳しくすると医療そのものがうまく連携されない」と述べ、ある程度柔軟にする必要があるとの認識を示した。」


キャリアブレイン「共通番号制度、医療情報は特別法を整備- 政府・実務検討会が大綱案を了承」 ご参照

日本の病院と役所での個人情報漏洩紛失は,報道されているだけでもかなりの数になります.患者情報について特別法で守秘義務を柔軟にするより,むしろHealth Insurance Portability and Accountability Actと同様の厳しい法律が必要なのではないでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2011-06-30 20:28 | 医療