弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

補助人工心臓,日本はなぜベストな製品を使わないのか?

b0206085_19222957.jpg◆ ラティフ・アルソグル医師

1年以上も前の記事ですが,朝日新聞2010年2月10日のインタビュー「「国循型」人工心臓は博物館行きの代物、なぜベストな製品を使わないのか 人工心臓専門医ラティフ・アルソグル氏」で,ドイツ・バードユーンハウゼンの心臓病センターのラティフ・アルソグル医師が,重要な指摘を述べています.

アルソグル医師は,長期使用を前提とした人工心臓は,昨年,全置換型人工心臓が12,補助人工心臓が103と述べます.かなり多いです.

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◆ ラティフ・アルソグル医師の奨めるベストな製品

アルソグル医師は,全置換型では,米国シンカルディア社のカーディオウエストが、臨床で使える唯一の機種と述べます.
補助人工心臓は,2010年時点では,米国ハートウエア社のHVADがベストと述べます.

「私は、市場に出ている機種の中でベストと思ったものを、優先的・集中的に使います。補助人工心臓では、今はまず第一に米国ハートウエア社のHVAD、続いてソラテック社のハートメート2です。日本のテルモ社のデュラハートはその次ですね。
HVADは本体が140グラムと軽く、デュラハートの540グラムの3分の1以下です。血栓ができるリスクも非常に低く、安全です。手のひらに載るサイズで、専門的に言うと、手術の際に心臓の脇にHVADを納めるポケットをつける必要がありません。ほかのHVADより大きな補助人工心臓はポケットを設けないといけない。手術時間に大きく影響しますし、体への負担も違います。HVADは、小柄な日本人向けだと思いますよ。皮膚を貫通するケーブルの太さも、デュラハートの8ミリに対しHVADは4.5ミリ。ケーブル部分からの感染症が心配ですから、なるべく細いほうがいい。さらに、コントローラーが軽く、電池が長持ちして、血流量などのディスプレーが見やすい。現状ではベストの製品です。」


日本では,海外製品は小柄な日本人には向かない,と言われることがありますが,むしろHVADの方が小型なのです.

◆ デュラハートについて

テルモのデュラハートについて,アルソグル医師は,次のとおり述べます.

「07年に販売されてから08年あたりまでは優先的に使っていました。その時点でベストな製品だと思っていたからです。でも、今は主役ではありません。確かに血栓はできにくいし、長期の使用にも耐える良い製品です。ただ、小柄な人には少し大きいかもしれません。何度かポンプに問題が発生して、取り換えたことがありました。そこへHVADが出てきた。先ほど言ったような点で優れているので、昨年の後半からはほとんどHVADを使っています。」

さらに,アルソグル医師は,人工心臓の技術進歩は日進月歩で,そのうちHVADをしのぐ製品が出てくる,そうしたら私はそちらを使います,と述べます.

◆ 国循型について

アルソグル医師は,国循型(体外型の人工心臓)について,次のとおり述べます.

「国循型は、血栓が出来やすく、4週間から6週間でポンプを取り換えなければなりません。はっきり言って、世界でも最も質の悪いポンプです。正直に言えば、博物館行きです。きれいにパッケージして博物館に飾ってほしい。大型の駆動装置に体外型の拍動流ポンプというシステムもよくないし、使われている素材も古い。なぜ、あんな前世紀の遺物を日本人はいつまでも使うのですか。」

◆ 日本の遅れ

日本では,国循型と呼ばれる体外型の古いタイプの人工心臓が,移植待ちの患者に使われています.サンメディカル技術研究所の「エバハート」とテルモの「デュラハート」がようやく承認を受け,平成23年4月から販売されています.
しかし,世界的な水準からみると,すでにデュラハートは,2007~2008年ではベストでしたが,それを凌ぐ製品が使用されている状況になって,ようやく2011年に承認販売されたのです.

この著しい遅れについて,アルソグル医師は,「日本人は日本の製品が一番だと思いこんでいるのではないですか。国産品しか見ていないので、遅れてしまう。私は日本の外科医は冬眠中だと思っていますよ。」と述べます.

医療イノベーションが目指すところは,国産の医療機器の開発です.
しかし,国産品が優先され,海外のベストな製品が使えないということになれば,不利益を被るのは日本の患者です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-07 19:07 | 医療事故・医療裁判