Souvenir de Marcel Proust (マルセル・プルーストの思い出)
医学部教授(公衆衛生)の息子で,医者嫌いのマルセル・プルーストは,喘息を患い,肺炎で亡くなりました.喘息患者だったことは,『失われた時を求めて』に影響を与えていると思います.
私が『失われた時を求めて』を読み始めたときは,全訳がでていないときでした.
「スワン家の方へ」が筑摩の世界文学体系にはいっていたので,読みました.
小さな字で延々と続く長い文章に身をまかせ,その世界に浸りきると,それまで読んだどの小説よりも感覚,感性があうように感じました.それまで言葉にならないことが文章になって,こういう感じわかる,というところが好きでした.でも,当時はそれしか分かりませんでした.
後に,きれいな装丁で全訳がでました.字も大きくなり読みやすくなりました.多くの人物が登場しますが,1人1が丁寧に描かれています.
最後まで読むと,社交界の大物も年老い死んでいく,華やかだったものも朽ちていく,時間の経過が鮮やかでした.記憶はその時間を超えて不滅である,というテーマで書かれた小説と思いました.
今も時々読み返すことがありますが,以前に読んだときの記憶にくわえ,新しい魅力を発見します.
アルベルチーヌのモデルが男性であることを意識して読むと,甘美さがいっそう濃厚に感じられます.
吉川一義さんの訳が刊行中で,(2)まで出ています.完訳には10年以上かかりそうなペースですが,お若い方には,新しい訳の方が読みやすいと思います.
『失われた時を求めて』は,すこしだけと思って読み始めても,つい朝まで読んでしまう本ですので,手にするのは休日の前日をお奨めします.
今日7月10日は,マルセル・プルーストの誕生日です.
谷直樹
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