弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」と日医の「基本的提言」

b0206085_725629.jpg日医の基本的提言が発表されましたので,医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案(以下,単に「大綱案」といいます)と比較してみたいと思います.

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◆ 院内事故調査委員会と院外事故調査委員会の2層構成

日医の基本的提言は,院内調査委員会と院外調査委員会(第三者的機関)は2層建てで,院内調査委員会を重視しているところに特徴があります.
(「第三者機関」ではなく,「第三者的機関」という表現からすると,日医の基本的提言は,完全に公正な第三者を想定していないのはないかという懸念があります.)

大綱案は,院内調査は行われていても,実効性と公正性の観点から,院外調査委員会による調査が必要だ,という考えに基づいています.

◆ 院内事故調査委員会

日医の基本的提言は,「小規模病院や診療所においては、医師会・大学等からの支援を依頼できる体制を築く。」としています.これは,重要なことです.

日医の基本的提言は,「院内事故調査の重要性は、医療事故の原因分析もさることながら、調査分析後の再発防止の唯一の担い手が当該医療機関である点にある。」と述べています.
しかし,再発防止の唯一の担い手が当該医療機関であるというのでは,いつまでたってもダメな医療機関はダメなままです.当該医療機関のみならず,患者,患者団体と第三者機関が,再発防止に手を貸すという体制があって,実効的な改善がなされると思います.

日医の基本的提言は,「院内事故調査は、身内による内部的な調査であることから、調査の質を担保するために一定の基準を設ける必要がある。」と述べています.
ただ,一定の基準が守られていたとしても,院内事故調査には,身内の調査であることから,極力バイアスを排除するシステムが必要です.
日医の基本的提言は,「医療事故調査委員会は、医療事故が起こった時に迅速に発動させる委員会で、院内の委員と外部委員(専門委員、法律家、有識者)で構成される。」としています.もし,この外部委員が身内同然の人では,バイアスがかかった調査となってしまいます.

◆ 院外事故調査委員会への調査請求

患者側が,バイアスがかかっているため公正な事故調査が行われていないと述べる場合には,院外事故調査委員会による調査が必ず行われるシステムであることが必要です.
日医の基本的提言は,院内医療事故調査委員会からの調査依頼のみならず,「患者・家族から本「第三者的機関」へ調査請求することも可能とする。」としていますので,患者側が院内事故調査が公正に行われていないとして院外事故調査委員会に調査請求できるものと考えられます.また,患者側から調査請求があれば,当然調査が行われるべきものだと思います.

◆ 院外事故調査委員会は死亡事案に限るのか

日医の基本的提言は,「第三者的機関による医療事故調査は、医療行為に関連した死亡事例を対象とする。」とします.マンパワーと財源に考慮してのことです.
しかし,重度の障がいを負った事案なども,死亡事案と同様に,調査の必要性は高く,調査の対象にすべきと思います.必要なことにはマンパワーと財源を投入するという考えで,制度設計すべきと思います.

◆ 院外事故調査委員会の構成

従前,第三次試案に対し,委員会は医療の専門家のみで構成すべきという意見もありましたが,医療の専門家だけでなく,法律関係者およびその他の有識者を加えて,多面的な委員構成とすべきとの意見が支持され,大綱案は,委員会の透明性,中立性,公正性の担保のためには医療の専門家のみでなく,法律家や医療を受ける立場にある者等の参加も必要との考えのもと,医療の専門家以外の者も委員として任命する,としています.

日医の基本的提言は,「具体的には、現在の「一般社団法人日本医療安全調査機構」を基本に、日本医師会、日本医学会をはじめ医療界の関係団体が参加する組織を再構築し、かつ各都道府県には1箇所以上の地方事務局を、都道府県医師会の積極的な関与のもとに設置するなど、既存の組織と実績をベースに、一層の拡充・機能強化を図ることが有効と考えられる。」としています.

透明性,中立性,公正性の観点から,大綱案の方が適切です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-15 06:22 | 医療事故・医療裁判