弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

国産の埋め込み型補助人工心臓,その光と影(3)~国循のエバハート治験事故

b0206085_8535285.jpg◆ 国循での臨床試験中の事故

国立循環器病センターで平成19年春,補助人工心臓「エバハート」(EVAHEART)を臨床試験で装着した男性(当時18歳)が心肺停止し脳に重大なダメージを受け,意識不明のまま平成20年春に死亡しました.

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◆ 植込み型補助人工心臓治験症例に関する事例調査委員会報告書

調査委員会(委員長・上田裕一名古屋大教授)が設置され,調査報告書が発表されました.(現在はサイトから削除されています.)

遺族側代理人弁護士の堀康司氏は,「報告書には、心肺停止に至った原因、治験の手続き、院内の事故調査体制という3点の柱がある。いずれについても国立循環器病センターに対して非常に厳しい指摘をする内容になっていると受け止めている。詳しい事実が明らかになり、大部の報告書を短期間にまとめた委員会の努力に遺族は敬意を表している。この報告書を国立循環器病センターがどう受け止めるのかを引き続き注視していく」とコメントしました.(「「7万字の報告書」に見る事故調査の可能性と限界」)

◆ 人工心臓装着後の体制

「報告書によると、心臓移植や人工心臓の装着を受けた患者への治療は臓器移植部が中心になるが、ふだんは心臓血管内科が担当。指揮系統が不明確で、医師間の情報交換も乏しかった。男性の容体急変は日曜で臓器移植部の医師はおらず、エバハートの知識もない医師が受け持ったという。」(2009年6月27日 読売新聞)

人工心臓装着から約2週間たった平成19年春に容体が急変した際、連絡を受けた受け持ち医は重篤な状態と判断しませんでした.
受け持ち医は,一般の後期研修医に当たる心臓内科医で,人工心臓の患者を診た経験はありませんでした.
また,急変したのは日曜日で,装着手術をした臓器移植部の医師がバックアップする体制も不十分でした.

◆ 心肺停止の原因

「心肺停止の原因は、エバハートの影響や循環血液量の減少などによって右心不全が悪化したと推定。心肺停止後、人工心臓装着中には禁止されている心臓マッサージを臓器移植部長の指示で行ったため、出血して心臓内に血腫が生じたが、緊急時なのでやむを得なかったと判断した。」(2009年6月27日 読売新聞)

◆ 治験継続の同意について

事故後,母親は,口頭で治験継続を望まいんことを述べました。母親が書いた治験継続の同意書には「納得できません。生命維持には治験に参加するしかないでしょ?」と書き添えられていました.治験を中止しても装置を外す必要はなく,説明が不十分でした.報告書では,この点が厳しく指摘されました.

(次回は,東京女子医大の例について書きます.)

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-15 08:45 | 医療事故・医療裁判