弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

国産の埋め込み型補助人工心臓,その光と影(4)~東京女子医大のエバハート治験事故

b0206085_100165.jpg◆ 東京女子医大病院でのエバハート治験中の事故

平成19年3月,心筋梗塞により東京女子医大病院に入院した女性が,補助人工心臓エバハート(EVAHEART)の埋め込み手術を治験で受けました.

平成20年7月,補助人工心臓エバハートが接触する部分で,圧迫による胃穿孔を起こしていることがわかり,被験者は縫合手術を受けました.
同年8月,被験者は,脳内出血を発症し,同年10月に死亡しました.

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◆ プロトコールは守られたのか

治験を実施するには,プロトコール(Protocol,治験実施計画書)を定めます.プロトコールは,治験を実施する医療機関とメーカーが遵守しなければならない事項を記載した実施計画書です

エバハートの治験には,小柄な患者への人工心臓埋め込みは危険を伴うため,体表面積1.4平方メートル未満の患者を対象としない,という除外基準が設けられていました.
ところが,患者本人が記録していた手術直前の体重から推定される体表面積は,1.347平方メートルでした.

また,エバハートの治験プロトコールでは全例手術ビデオを撮ることが義務付けられていましたが,本件は撮影されていなかったようです.

遺族の代理人弁護士は,平成21年1月,プロトコールが守られていたのか疑問を抱き,東京女子医大病院に,中立的第三者による事故調査委員会を設置し,調査するよう申し入れました.
東京女子医大病院は,その申し入れを拒否しました.

そこで,遺族は,平成23年6月30日,東京女子医大と心臓血管外科主任教授らを被告とし,プロトコールから逸脱した不適正な治験であったことを理由として,約3100万円の損害賠償を求める訴訟を,東京地裁に起こしました.

◆ 感想

同じように治験中におきた事故で,国循では調査委員会が設けられ報告書が公表されました.東京女子医大は,調査を拒み,訴訟となっています.
院内調査の必要性は,日医の基本的提言も指摘するところです.
国循は誠実に対応しましたが,東京女子医大の対応はいかがなものでしょうか?

治験は,薬事法に従い,厚生労働大臣の承認を受けるために実施する臨床試験です.医療機器の臨床試験に関しての基準は,医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令が定めています.

エバハートの開発費用は50億円と言われています(NEWS ポストセブン「開発に50億円投じた補助人工心臓 手術代別で1915万円也」ご参照).

エバハートの開発者は,サンメディカルの代表者の実の兄弟である,東京女子医大の山崎健二教授らです.
その山崎教授がエバハートの治験にかかわっています.そのような治験が公正な治験と言えるのか,疑問があります.

プロトコール違反は,被験者の安全をないがしろにするものです.また,そのような治験は治験の意味がなく,不適正な治験をもとに評価されたものは,患者の安全を損なう危険があります.

もし,このようなプロトコール違反が日本の治験の実態であるならば,国産の医療機器を開発し,日本の医療産業を育成するという政策より,海外で承認された医療機器を日本でも迅速に承認するシステムの方が,患者の安全と利益に資すると思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-16 01:44 | 医療事故・医療裁判