弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

金沢大,「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に違反

b0206085_8435579.jpg◆ 報道

日経「計画書提出せず再生医療 金沢大、国の指針に違反」は,次のとおり報じています.

金沢大(金沢市)は22日、2009年2~12月に実施した、患者本人の細胞を用いた再生医療の臨床研究7件について、厚生労働省に実施計画書などを提出しておらず、国が定める「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に抵触していたと発表した。

金沢大によると、問題となった臨床研究は、患者から脂肪由来細胞を取り出して本人に戻す内容で、対象患者は30~70代の男性3人と女性4人。重症の虚血性心不全が1件、肝硬変が6件だった。今回の肝硬変患者への再生医療の臨床研究は世界初で、虚血性心不全は国内初だったという。

08年8月、大学内の倫理委員会で承認されたが、その後、脂肪由来細胞の中にヒト幹細胞が数%含まれていたことが判明。金沢大は「国に計画書を提出しなければならなかった」としている。患者の臨床経過については問題はないという。〔共同〕


◆ 感想

ヒト幹細胞臨床研究が社会の理解を得て,適正に実施・推進されるよう,個人の尊厳と人権を尊重し,かつ,科学的知見に基づいた有効性及び安全性を確保するために,「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(平成18年厚生労働省告示第425号)」は平成18年9月1日から施行されました.
本件当時は,この指針が適用されていました.

その後,ヒトES細胞やヒトiPS細胞を用いた研究が行われるようになり,平成22年11月1日,「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(平成22年厚生労働省告示第380号)」に改められました.

この金大のグループは,遺伝子解析により優れた研究成果をあげています.
たとえば,1)C型慢性肝炎のインターフェロンの効果を事前に予測する「インターフェロン反応チップ」を開発,2)血液のRNAに蛍光試薬を加えて反応のパターンを調べ消化器がんを発見するシステムを開発,3)肝臓で働く遺伝子の解析を通じ,血糖値を上げるホルモン群「ヘパトカイン」を発見等です.
「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」は,当然知っていたと思います.
また,金大の倫理委員会は,どう考えていたのでしょう.
ヒト幹細胞が含まれていることを知らなかったのでしょうか.
なぜ,このようなことが起きてしまったのか,金大から説明がほしいところです.

【追記】
金沢大,「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に違反(続報)」ご参照


谷直樹
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by medical-law | 2011-07-23 01:53 | 医療