弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

飯野歯科八重洲診療所,平成19年5月22日のインプラント手術で動脈傷つけ患者死亡,歯科医書類送検へ

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◆ 報道


「東京都中央区八重洲の歯科医院で平成19年、人工歯根に人工の歯をつける「インプラント手術」を受けていた都内の女性会社役員=当時(70)=の容体が急変し死亡した事故で、警視庁捜査1課が近く、業務上過失致死の疑いで、女性を手術した男性歯科医を書類送検する方針を固めたことが31日、捜査関係者への取材で分かった。捜査関係者によると、歯科医は捜査1課の調べに、手技の過失を否認しているという。

 捜査1課の調べなどによると、女性は19年5月22日、同院で男性歯科医にインプラント手術を受けていた最中に出血が止まらなくなり、容体が急変。心肺停止状態となり、同院で止血や心臓マッサージなどの救命措置を受けたが容体が回復せず、近くの病院に救急搬送された後の翌23日に死亡した。

 捜査関係者によると、女性の手術では、ドリルがあごの骨を貫通した上、動脈を巻き込んで切断し、大量出血した可能性があるという。警視庁は歯科医の手技に問題がなかったか事情を聴くとともに、手術前後の経緯を調べていた。

インプラントはドリルで歯茎に穴をあけ、あごの骨に人工歯根を埋め込み義歯を装着する外科手術。医療関係者によると、入れ歯に比べて、かみ合わせがよく、見た目がきれいなことなどから、手術を受ける人が増えている。

 歯科医は事故後、女性の遺族らに対し、手術の際、持病などにより体調不良だったと説明した上で、手術ミスを認めていたという。遺族らはその後、約1億9000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしていた。

 歯科医は、国内のインプラント手術の先駆者として知られていたといい、事故当時は同院の院長を務めていた。」


msn産経「都内の歯科医を書類送検へ インプラント手術で女性死亡 過失を否認」ご参照

◆ 予見可能性

ドリルが骨を貫通して動脈を切断し,血がのどに詰まり,窒息死した可能性が高いとみられていますが,歯科医は,その位置に動脈があることを予見できなかった,として過失を否認しているそうです.

日本口腔インプラント学会のサイトの「パノラマだけの診断ではリスクが大きい?」に次の記載があります.

「下顎骨舌側への穿孔は死につながる」

「下顎の舌側にドリルが穿孔すれば、どんなことが起こるでしょうか。下顎骨舌側には外頸動脈の枝である「舌下動脈」ならびに「オトガイ下動脈」が存在します(図3)。
穿孔したドリルは回転しながらこれらの血管を巻きつけて引きちぎってしまうことでしょう。
(中略)
その血腫が口腔内に限局するだけであれば比較的問題は少ないかもしれませんが、重力によって血液は下にさがるため咽頭にも血腫を形成します。その結果、血腫が気道閉塞を起こし(図4-b,d)、場合によって窒息に至らしめてしまいます。
 このような報告が、海外の論文で多数散見されます8,9)。日本語であれは古賀先生がご執筆された「インプラント外科学 偶発症編(クインテッセンス出版)、2007」)10)が非常によくまとめられているので、一度ご覧になることをお勧めします。


したがって,予見可能性はあるといえるのではないでしょうか.


◆ 感想

インプラント手術では高名な飯野歯科八重洲診療所の飯野久之院長が起こした事故です.

歯科医のインプラント手術については,弁護士への相談が多く,問題の発生が多い手技と思います.
泣き寝入りで終わらせることのないようにしないといけませんね.

ちなみに,東京地裁平成6年3月30日判決,大阪地裁平成15年1月27日判決,大阪地裁平成18年8月30日判決,大阪地裁平成20年5月9日判決は,東京地裁平成20年12月24日判決は,インプラントの危険性,短所についての説明義務違反を認めています.
さらに,東京地裁平成5年12月21日判決,東京地裁平成6年3月30日判決,名古屋地裁平成15年7月11日判決,東京地裁平成20年12月24日判決は,手技上の過失(注意義務違反)を認めています.

【追記】

2012年12月14日,検察側は禁錮2年を求刑し、弁護側はこれに対し無罪を主張し,東京地裁(吉村典晃裁判長)での審理は結審しました.判決は2013年3月4日です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-01 01:54 | 医療事故・医療裁判