弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

札幌地裁平成23年7月21日判決,ひまわり薬局「バップフォー」と「バソメット」の調剤過誤事件

b0206085_348224.jpg◆ 事案

患者(96歳。女性)は,平成20年6月,医師から頻尿の治療薬「バップフォー」の錠剤90日分の処方を受け,ひまわり薬局に処方箋を提出しました.
薬剤師は誤って血圧降下剤「バソメット」の錠剤を渡しました。
患者は,服用41日を過ぎて脳梗塞で倒れ,1カ月後に死亡しました。

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◆ 判決

札幌地裁判決は,誤って調剤されたバソメットの1回の服用量が通常の4倍だった点などを踏まえ,「不必要な薬を服用させられ,典型的な副作用である脳梗塞で死亡したと認めるのが相当」とし,「ひまわり薬局」の運営会社「北海道保健企画」と担当薬剤師に約2500万円の支払いを命じました.

毎日「裁判:調剤誤り96歳女性死亡 薬局に2500万円賠償命令 札幌地裁判決」ご参照

◆ 感想

似た名前の薬剤の調剤過誤事件は結構あり,名称変更が必要と思われるものもあります.
しかし,「バップフォー」と「バソメット」は,「バ」と「ッ」しか共通していませんので,あまり似ていないのではないか,と思います。

「バップフォー」(一般名;プロピベリン)は,頻尿,尿失禁の薬です.

「バソメット」(一般名;テラゾシン)は,1)本態性高血圧症,腎性高血圧症,褐色細胞腫による高血圧症, 2)前立腺肥大症に伴う排尿障害の薬です.
添付文書の「高齢者への投与」の項に,「高齢者では低用量(例えば1回0.25mg,1日2回)から投与を開始するなど,患者の状態を観察しながら慎重に投与すること.〔一般に,過度の降圧は好ましくないとされている.(脳梗塞等が起こるおそれがある.)〕」と記載されています.

この添付文書の記載からすれば,脳梗塞と因果関係を認めた判決は適切だと思います.

なお,余命の短い患者について慰謝料を減額するという考えが主張されることがありますが,96歳だから命の値段が安くてよいはずはありません.
一般に,高齢者でも,慰謝料2000万円,葬儀費用150万円,脳梗塞の治療費,弁護士費用のうちこれらの1割の金額は,損害として認められます.
約2500万円の損害額の認定も,適切と思います.

なお,日本薬剤師会編集の『薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル』(初版2006年,第2版2011年)が薬事日報社からでています.

ひまわり薬局ではどうだっかったかは知りませんが,一般的には,薬剤師に対する安全教育がまだまだ不足しているように思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-05 03:40 | 医療事故・医療裁判