弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋高裁平成23年8月12日判決(狭心症の運動負荷試験,除細動器なし),患者側逆転勝訴

b0206085_9271799.jpg◆ 事案

平成16年1月,胸の痛みを訴えて岡崎市の医療法人鉄友会宇野病院を受診した男性患者時(当時44歳)に対し,医師は,狭心症を疑って自転車型のペダル踏み運動器具「エルゴメーター」で運動負荷試験を指示しました.

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医師は立ち会わず,除細動器(Defibrillator)を準備しない状態で,負荷試験が行われました.

患者は,この負荷試験中に,脈拍が異常に速くなる「心室頻拍」の状態となり,不整脈で意識を失いました.

その後少なくとも2分29秒間は,蘇生措置は行われまんせでした.

患者は,蘇生後,低酸素脳症により記憶力や言語表現能力に障害が残りました.

患者は,別の病院でリハビリをしていましたが,一時帰宅中の同年5月,不整脈により死亡しました.負荷試験と死因には関係がないとされています.

◆ 名古屋地裁判決

一審の名古屋地裁判決は,経験のある臨床検査技師がいたことなどを理由に態勢が不十分とまではいえない,として請求を棄却しました.

◆ 名古屋高裁判決

名古屋高裁判決は,「検査技師が適切な訓練を受けたと認める証拠はない」とし,「担当医の立ち会いで除細動器を準備し試験をしていれば,1分以内に蘇生措置を開始できた」と注意義務違反を認め,医療法人鉄友会に6600万円の損害賠償支払いを命じました.

中日「病院側に賠償命令、名古屋高裁 除細動器置かず負荷試験」ご参照

◆ 感想

運動負荷試験は,心電図の電極をつけた状態で運動し,運動時の心電図をみるものです.
運動負荷試験の中でも固定自転車のペダルこぎ(エルゴメーター負荷試験)は,異常を誘発しやすい反面,危険性もあります.
医師が立ち会い,除細動器等の緊急備品を検査室に用意しておくことが必要です.

除細動器(Defibrillator)を準備しない状態で,医師が立ち会わず,負荷試験を行うと,本件のような結果になることは予見できた筈です。
除細動器(Defibrillator)を準備し,医師が立ち会っていれば,2分29秒間蘇生措置が行われないという事態は回避され,本件結果は回避できた筈です.

なお,本件事故より後の調査ですが,日本心臓リハビリテーション学会診療報酬対策委員会が,平成19年2月15日~平成19年2月25日に,日本循環器学会専門医教育指定病院ならびに関連施設に対し実施したアンケート調査の結果は,次のとおりです.

(エルゴメータ運動負荷試験について)「回答154施設中130施設(84.4%)は医師が1名は立会いし、医師が立ち会っていないとしたのはわずかに3施設(1.9%)であった。」

「エルゴメータ運動負荷試験は臨床検査技師と検査担当医が同時に行うことが多く、回答156施設中、エルゴメータ運動負荷試験には必ず医師の立会いのもと行っているとした施設は146施設(93.6%)、臨床検査技師のみで行っているとした施設はわずかに3施設(1.9%)であった。」

「緊急備品は、除細動器、救急カート、酸素吸入は、ほとんどの施設で、検査室に常備しているまたは、院内に配置されているとの回答であった。


名古屋高裁判決が本件について賠償責任を認めたのは適切と思います.

地裁の不当な判決には,控訴すべきですね.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-13 09:21 | 医療事故・医療裁判