弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

先行行為に基づく作為義務,調剤過誤を犯した薬剤師の場合

b0206085_1013986.jpg毎日は「女性薬剤師は「社長(小嶋会長)に叱責されるのが嫌で報告も回収もしなかった」と供述しているという。」と報じています.

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小嶋薬局事件で,今までの調剤過誤事件以上に怒りを感じるのは,調剤過誤を認識しながら放置していた点です.

自らの先行行為(調剤過誤)によって結果発生の危険(死亡の危険)を招いた場合,その人は保障人的地位に基づいて,結果発生を防止する義務(作為義務)があります.
例えば,過失によって燃えているろうそくを倒した場合,その人は消火活動を行う義務があり,保険金をかけているから燃えてもいいと思って,消火活動を行うことなく立ち去った場合,放火罪(故意犯)にあたります.
ひき逃げが,保護責任者遺棄致死罪や殺人罪にあたることがあるのも,同じ理屈です.

調剤過誤によって死亡の危険を発生させた薬剤師は,結果発生を防止する義務(作為義務)があります.ジスチグミン(商品名,ウブレチド,ウブテック)を高齢者が服用すれば死亡する危険があることは,薬剤師である以上当然認識していたと思います.したがって,ただちに誤った薬を渡した人に連絡する義務があります.そして,調剤過誤に気づいた時点で連絡をしていれば死亡が避けられたのであれば,因果関係もあります.

その薬剤師が,回収しないことで死んでもやむをえないと思った(殺人の故意あり)のか,回収しなくても体調を崩すだけで死ぬことはないだろうと思った(傷害の故意あり,殺人の故意なし)のか,は微妙ですが,本件は,単なる業務上過失致死ではなく,傷害致死罪あるいは殺人罪の成立が検討されるべき事案ではないでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-20 08:49 | 医療事故・医療裁判