弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大和市の病院,1500万円で和解へ(ベッド上のいすから転落後骨折がわからず出血死した事案)

◆ 報道
大和市の病院,1500万円で和解へ(ベッド上のいすから転落後骨折がわからず出血死した事案)_b0206085_11252138.jpg神奈川新聞「市立病院で患者がベッドから転落後死亡、市が遺族と和解へ/大和」(平成23年8月23日)は,次のとおり報じています.

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「大和市は22日、90歳代の男性患者がベッドから転落後、死亡した市立病院の事故で、男性の遺族に損害賠償金1500万円を支払うことで和解する確認書を締結した、と発表した。

 市によると、男性は2006年8月から心不全や高血圧などで通院。翌07年6月、血栓の超音波検査中に臨床検査技師の女性からベッド上のパイプいすに座るように指示を受けた。しかし、立ち上がる際にバランスを失い、床に転落、肋骨を折るなどした。

 男性は翌日、呼吸不全で死亡した。遺族側は大和署に業務上過失致死容疑で告訴。司法解剖では、骨折による左胸内の出血などが死因とされ、損害賠償を求めていた。

 病院側は「転落を回避できず、事故直後の診断で骨折を把握できなかった。結果的に骨折が容体急変の要因になった。診療に不十分な点があったことをおわびする」などと釈明。事故後、同様の検査では(1)危険性のある患者には複数で対応する(2)ベッド上にいすを置かない―などの再発防止策をとった。

 市は9月の市議会第3回定例会で補正予算案を提出。全額が病院賠償責任保険で支払われるという。」


◆ 感想

ベットの上にパイプいすを置いて90歳代の患者に座らせると,転倒転落する事態が生じることは,当然予見できます.また,胸部の検査も実施していますが,骨折を把握せず,事故の約23時間後、容体が急変し骨折による左胸内の出血が死因になったのですから,注意義務違反だけではなく,因果関係もあると言えます.
骨折を把握しなかったことが注意義務違反か否かが争われる事案がありますが,本件は,何れにしろ最初に,ベットの上にパイプいすを置いて90歳代の患者に座らせた時点で,注意義務違反がありますから,責任を免れることはできません.

病院が責任を認め,再発防止策をとったことは重要です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-23 11:15 | 医療事故・医療裁判