弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

甲府市立甲府病院,推奨基準を超える量のテクネチウムを投与,子どもが内部被曝

b0206085_18325100.jpg朝日新聞「検査で子ども150人が過剰被曝 甲府の病院」(平成23年8月31日)は,次のとおり報じています.

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「甲府市立甲府病院(小沢克良〈かつら〉院長)の放射性物質(放射性同位元素)を使った検査で、日本核医学会などが勧告する基準を超える同位元素が投与され、子ども約150人が過剰に内部被曝(ひばく)していたことがわかった。同病院は1日、会見を開き、調査結果を公表する予定。

 複数の関係者によると、原因は放射性物質「テクネチウム」を使った検査。これが入った検査薬を患者に静脈注射する。

 同病院で1999年から今年までにこの検査を受けた15歳以下の子どもに同医学会や日本放射線技師会など複数の推奨基準を超える量のテクネチウムが投与された。うち40人が10倍以上だった。

 過剰投与された子どもたちの全身の内部被曝線量を算出すると生涯の推計で平均約30ミリシーベルト。多い子で150ミリシーベルト以上だった。

 患者に何らかの利益がある医療被曝と何の利益もない原発事故の被曝は単純に比較できないが、福島県による東京電力福島第一原発周辺の住民の検査では、これまで全員が生涯の内部被曝線量(推計)が1ミリシーベルト未満だった。

 全身の被曝線量が100ミリシーベルトを超えると成人でもがんのリスクが高まる恐れがある。子どもは放射線の健康影響を3倍以上受けやすい。ただし、今回は間隔をあけて複数回の検査を受けた子も含まれることなどから、検査直後に健康被害が出る被曝線量ではないとみられている。 」



今日の会見を待ちましょう.

【追記】

朝日新聞「過剰被曝「チェック態勢、機能せず」 甲府病院副院長」 (平成23年9月1日)は,下記のとおり報じました.

「放射性物質(放射性同位元素)を使った検査で子どもが基準を超える放射性物質を投与され、過剰に内部被曝(ひばく)していた問題で、甲府市立甲府病院(小沢克良〈かつら〉院長)は1日、検査薬のチェック態勢が機能していなかったことを認めた。

 また、山梨県が8月31日、放射性物質の検査薬の使用記録簿の管理に不備があるとして、指導していたことがわかった。

 同病院では、50歳代の男性放射線技師が責任者として担当しており、独自の判断で、日本核医学会などの推奨する基準を超える放射性物質が入った検査薬を投与していたという。

 過剰投与が10年以上続いていた背景について、医療安全担当の渡辺健二副院長は記者団の質問に対し「監査システムがうまく機能していなかった。台帳に投与量を記載することになっているが、保険請求上の数値を書いていたため、わからなかった」と話している」。


読売新聞「子どもへ基準超す放射性物質投与…市立甲府病院」(平成23年9月1日)は,下記のとおり報じました.

「甲府市立甲府病院(甲府市増坪町)が1999年5月から今年4月にかけて、腎臓疾患を患っている15歳以下の子どもへの放射性物質を使った検査で、日本核医学会が推奨する基準値を超える放射性物質を投与していたことが1日、同病院への取材で分かった。

 過剰投与を受けていたのは84人。同学会などが定めるガイドラインでは投与量を医師が決めることになっているが、50歳代の男性の放射線技師が独断で決めていた。

 小沢克良院長らによると、検査に使われたのは人工の放射性物質「テクネチウム99m」を含んだ薬剤。薬剤は腎臓に集まりやすい性質があり、患者の静脈に注射し、放射性物質を投影するカメラで撮影すると、画像から腎臓の形などがわかる。成人に対する日本核医学会の推奨投与量は最大185メガ・ベクレルで、15歳未満に対しては年齢によって量を減らすことになっている。

 しかし、技師は医師に相談せず、15歳以下の患者84人に対し、成人に対する推奨量を超えるテクネチウム99mを投与していた。このうち、年齢に応じた投与推奨量の10倍を超えていた子どもは41人いた。全身の内部被曝(ひばく)量は最大180ミリ・シーベルトが予測される子どももいたという。」
 

この放射線技師は,危険性について無警戒で,基準を超えることについて何も考えていなかったようです.
そもそも,放射線技師が決めていたということにも,驚きました.
注意義務違反の程度は,きわめて重大です.

【再追記】

読売新聞「「放射性薬剤投与」改ざん、12年気づかず…山梨 市立甲府病院長 技師任せ謝罪」(平成23年9月2日)は,次のとおり報じました.

「12年間にわたり、基準値を超える「テクネチウム99m」が15歳以下の子ども84人に投与されていた山梨県甲府市立甲府病院では1日、小沢克良院長が記者会見を開き、謝罪した。

 責任者の男性放射線技師(54)が独断で投与量を決め、医師が実態を把握せずに現場任せとなっていたことも明らかになった。

 小沢院長は会見の冒頭、厳しい表情を浮かべながら「医療被曝(ひばく)を減らすよう努力するのが病院の使命なのに組織体制が不十分だった。患者とその家族には心からおわびを申し上げたい」と頭を下げた。

 会見に同席した野方容子放射線部長は「私が現場に任せきりだったのが一番問題だったと思う。投与する時に確認すべきだった」と釈明した。今後の対策として、日本核医学会のガイドラインに基づいて検査薬品の基本投与量を決めるとともに、医師が適正な投与量を指示するように改めるという。男性技師は現在、現場を離れて事務作業を担当しているといい、今後の処分については市に一任するという。病院は、過剰投与が明らかになった84人のほかに、放射性物質を使った検査を受けていた61人の子どもについても通知を出し、無料の個別相談を受け付ける方針だ。

 宮島雅展・甲府市長は、市立甲府病院で不適切な検査が行われていたことについて、「患者とご家族の皆様に心配をおかけし、心からおわび申し上げる。個別に健康相談などを実施し、管理態勢を強化したい」とのコメントを発表した。

専門家「常軌逸した量」
 核医学検査に詳しい専門家らからは、「核医学検査の信頼を失いかねない」などと危機感を募らせる声が相次いだ。核医学検査と被曝の関係に詳しい埼玉医大総合医療センター放射線科の本田憲業教授によると、子どもの場合、放射性物質の投与量は年齢や体格から個別に計算するが、基本的には必ず医師が関与しており、放射線技師が独断で行うことは考えにくいという。本田教授は「検査による被曝は診断が可能な画質が得られる最低限の線量に抑えるのが大原則。今回のような事態は、核医学検査の信頼性を失いかねない深刻な事態」と語った。

 日本放射線技師会長の中沢靖夫・昭和大学統括放射線技術部長は「画像が見えにくい場合は専門医師に相談して、投与量を増やすかどうか決めるのが原則。放射線技師が単独で薬を増やすということはあり得ず、これほどの異常な被曝線量になることは考えられない」と話し、日本放射線技師会として調査委員会を設置する考えを示した。

 推奨量の10倍のテクネチウム99mが投与されていたことについて、山梨県立中央病院の宮崎旨俊・放射線技師長は「(10倍は)常軌を逸した数字。健康への影響については専門家の間でも意見が割れており、現時点での評価は難しい」としている。」


どうしてこのようなことが起きたのか,日本放射線技師会が設置する調査委員会の調査に期待いたします.
また,病院は,個別に,どの患者がどの程度の被曝をしたのかを明らかにしてほしい,と思います.
そして,それぞれの内部被曝量をもとに,健康被害への影響がどの程度予測されるのか,これからできる健康被害を最小にする方法はあるのか,専門家がきちんと答えをだしてほしいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-01 09:52 | 医療