弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

無過失補償制度,北海道新聞社説,『医療事故補償 原因の究明あってこそ(9月5日)』 

無過失補償制度,北海道新聞社説,『医療事故補償 原因の究明あってこそ(9月5日)』 _b0206085_17535941.jpg無過失補償制度は,「原因究明と両輪」か,それとも「被害者の口封じ」か,考え方が分かれています。
北海道新聞は,本日の社説で,「補償だけでなく、謝罪や原因追及があってこそ、被害者や家族は心にひと区切り付けられる」「医療界も原因を究明できなければ、再発防止に役立たない」ということから,前者の考えから以下の社説を述べています.

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「医療事故で死亡するか、重い障害が残った患者とその家族に、医師の過失の有無にかかわらず補償金を支払う無過失補償制度の検討が厚生労働省で始まった。

 医療事故は患者側が損害賠償を求め民事訴訟を起こすにしても、立証に時間や労力がかかるのが悩みだ。
裁判を経ずに補償されれば、患者側の負担も減り、支払いも迅速になる。補償条件や金額、手続きなど具体的な制度設計を急ぐべきだ。
無過失補償はあらゆる医療行為が対象となる見込みで、患者側は認定する機関に申請し、基準に基づいて補償金を受け取る。支払いを優先し、事故責任は追及しない方向だ。

 産科の一部では2009年から、無過失補償を導入した。出産をめぐり訴訟になる例が多かったためだ。
出産事故で脳性まひとなった子どもの家族に、3千万円を支払っている。7月末までに192件の補償が決定するなど制度が定着してきた。

 問題は補償の財源だ。
産科では、運営組織の財団法人が出産1件当たり約3万円を保険料として病院から徴収。病院は健康保険の支払いで賄っている。
今回の制度はすべての医療行為が対象となるだけに、産科と同じ仕組みとはいかないだろう。
日本弁護士連合会は、国や医療機関、医療機器メーカーなどからの拠出を提案している。
巨額の財源を想定するならば、関係者が相応の負担をする考えは検討材料の一つになる。ただ、産科が実質、健康保険で補償していることとの整合性をどう取るのか。さらに議論を深める必要がある。

 無過失補償に対しては、患者から「金で口封じされるのでは」との懸念も出ている。産科補償を受けた患者が事実経過の説明が不十分として、提訴した例があるからだ。

 補償に重きを置くあまり、原因究明や再発防止策がおろそかになることがあってはなるまい。

 政府は08年、業務上過失致死で起訴された産婦人科医が無罪となった福島県立大野病院事件を受け、捜査機関によらない「医療版事故調査委員会」を検討した経緯がある。
しかし、カルテ改ざんなど悪質なケースについて、委員会による警察への通報を認めたため、医師の一部が反発し、法案化が棚上げされた。

 補償だけでなく、謝罪や原因追及があってこそ、被害者や家族は心にひと区切り付けられるという。

 医療界も原因を究明できなければ、再発防止に役立たないだろう。

 政府は事故調の権限や内容について医療関係者と早急に議論すべきだ。無過失補償と原因究明は、車の両輪であることを肝に銘じてほしい。」


谷直樹
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by medical-law | 2011-09-05 17:42 | 医療事故・医療裁判