弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋大学医学部付属病院,事故調査委員会報告に基づき謝罪(救急外来研修医の腹膜炎見落とし死亡事案)

b0206085_9151085.jpg<◆ 報道

読売新聞「腹膜炎を便秘と診断後に死亡…病院が遺族に謝罪」(平成23年9月8日)は,次のとおり報じました.

「名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)は8日、2009年2月に救急外来を受診した名古屋市の70歳代女性の腹膜炎を発見できずに帰宅させ、翌日に死亡する医療事故があったと発表した。

 同病院によると、女性は同月10日、腹痛や吐き気を訴えて来院。医師になって3年目の40歳代の男性研修医がレントゲン撮影などをしたうえで「習慣性の便秘」と診断し、薬を処方して帰宅させたが、女性は翌11日朝に自宅で意識を失い、別の病院で死亡した。

 女性は来院した時点ですでに大腸に直径1・5センチ程度の穴があいていた疑いが強く、レントゲンにも腹腔(ふくくう)内に空気が漏れ出ている様子が写っていた。

 外部識者らによる事故調査委員会は「研修医の知識・技量では発見できなかったのはやむを得ない」とする一方、「経験豊富な医師なら異常に気付いた可能性が高い」と指摘。国の指針を基にした当時の救急外来部門の取り決めでは、研修医でも3年目からは一人で診療を行い、患者の帰宅の可否を判断できることになっていたため、「救急専門医らが研修医の経験不足を補ったり、指導したりする体制を強化すべき」などと提言した。

 名大病院は体制の不備を認めて遺族に謝罪し、今年8月に示談が成立。救急部門の指導医や専従医師を事故当時の3倍の計21人に増やすなどして再発防止を図っているという。女性の長女は8日、弁護士を通じ、「同じことが起きないように委員会の提言を守ってほしい」とコメントした。」


◆ 感想

経験の少ない医師と経験豊富な医師では,同じものを見ても,その判断が大きく異なることがあります.
さらに,救急外来では,本件のように,医師の判断が治療の遅れを招き,不幸な結果に至ることもままあります.

私が取り扱っている救急の事案でも,他の病院の医師から意見を聞くと,経験の少ない医師の誤った判断が患者の死亡を招いている,と考えられました.

もちろん,単に損害賠償金を得るだけなら病院を被告に裁判を行えばすむことですが,それでは,その医師個人の判断ミスの問題だけにとどまり,病院が経験の少ない医師に任せきりにしている現状を真に反省し,事故を教訓にした再発防止ができるかは不確実です.
病院自らが公正な事故調査を行うことで真の反省が生まれ,実効的な再発防止につながると考え,私は,病院に,事故原因を究明し再発防止のために,外部委員をいれた公正な院事故調査委員会設置を求めています.

なお,名古屋大学医学部付属病院の事故報道が多いように感じられるかもしれませんが,同病院が積極的に事故調査を行い,公表しているためで,他の大学病院より医療の質が劣るわけではありません.
同病院では,このように,事故調査に基づき具体的実効的な再発防止策がとられることにより.患者の安全と医療の質が向上していく,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-09 01:43 | 医療事故・医療裁判