弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋高裁金沢支部平成23年9月12日判決,過失を認めた1審判決支持(高岡市民病院飛び降り自殺事件)

b0206085_9263451.jpg◆ 報道

KNB北日本放送「病院側の過失を認めた判決支持、控訴を棄却」(平成23年9月12日)は,次のとおり報じました.

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「高岡市民病院で3年前に女性患者が飛び降り自殺したのは病院側の安全管理が不十分だったためとして遺族が高岡市を訴えた裁判の控訴審で、名古屋高等裁判所金沢支部は12日、病院側の過失を認めた1審判決を支持し、控訴を棄却しました。

 この裁判は、平成20年5月に自殺を図ったとして高岡市民病院の精神病棟に入院した女性患者(当時36歳)が、翌日、看護助手が鍵を開けたベランダから飛び降りて死亡したのは病院側に安全管理などの面で過失があったとして遺族が高岡市に損害賠償を求めているものです。

 1審の富山地方裁判所は去年9月に、病院側の看護体制の過失を認めて病院を運営する高岡市に請求の半額となるおよそ3450万円の支払いを命じました。

 高岡市側と遺族側の双方が控訴していた控訴審で、名古屋高等裁判所金沢支部は12日、1審判決を支持し、控訴棄却を言い渡しました。

 これに対し高岡市民病院の沢崎邦広病院長は「判決文が届いていない現段階では、コメントは控えたい」としています。」


◆ 感想

本件は,自殺を図ったという重要な情報が周囲の職員に共有されていなかったことから看護体制の問題を指摘した富山地裁高岡支部平成22年9月28日判決後,高橋市長が,臨時市議会を召集し,「市が主張してきた基本的な事項が認められていない厳しい判決で,このままでは病院の信頼関係に影響が及ぶため,やむを得ず控訴する」と述べ,全会一致で控訴することが決まった,という経緯がありました。

しかし,本件は,自殺を図ったとして精神科病棟に入院した36歳の女性患者が,入院翌日,看護助手が鍵を開けたベランダから飛び降りて死亡した事案ですので,病院側に過失ありと判断されたのは至極当然と思います.

予見可能性については,具体的な診療に即して検討されねばなりませんが.自殺企図があって入院しているので,患者の自殺念慮について注意深く観察する必要があり,注意深く観察していれば再び自殺を試みることは予見できたのではないか,と思います.(なお,もし,注意深く観察することができないような病院の体制であったとすれば,それ自体に義務違反があると言えるでしょう.)

回避義務については,患者の自殺念慮が高まっているとみられるときは,医師や看護師が患者と静かに話をし,患者を落ち着かせることが必要です.患者を放置してはいけないと思います.

また,精神科の病棟では,屋上や高い階にあるベランダへの出入り口は,通常施錠されています.容易に自殺できる状況が与えられると,その状況が自殺の誘引となる可能性があるからです.
面倒でも,施錠を開けたらその都度閉めることが必要です.
本件で,看護助手がベランダの鍵を開けたままにしてあったことから,看護助手の注意義務違反といえるかもしれませんが,私は,むしろベランダへの出入り口の施錠が周知徹底されていなかったことから病院の安全管理体制に問題があったと考えます.病院の管理体制の問題が大きいと思います.

地裁判決は,飛び降り自殺に至る具体的な事情を考慮し,賠償額を半額とし,高裁もそれを支持していますが,それが本当に適切な判断か否かはかなり微妙と思います.看護助手の行為より,病院の安全体制に目を向ければ,全額賠償のほうが適切だったのではないか,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-13 02:58 | 医療事故・医療裁判