弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連,第54回人権擁護大会シンポジウムの感想

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◆ 第54回人権擁護大会シンポジウム第3分科会

第54回人権擁護大会シンポジウム第3分科会 「患者の権利法の制定を求めて いのちと人減の尊厳を守る医療のために」に参加するため,高松に行ってきました.
弁護士の人数が増えているのに,人権擁護大会の参加数が増えていないのは,残念です.
第3分科会は500人近い参加がありましたが,弁護士人口が3万人を超えていることを考えると,少ないと思います.

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ハンセン病の元患者たちは,淡々とした口調で,人権蹂躙のハンセン病政策が続けられてきた事実を述べまていました.
大分の 德田靖之先生の報告は,善意からハンセン病療養所の待遇改善をはかり結果として隔離政策を助長固定することになった例をあげ,「救う」という発想の危険性を説く内容で,心に響きました.

医師の方々のお話は,それぞれ理解を深めるために有用な内容でした.
田中恭子先生(順天堂大学医学部小児科准教授/子ども療養支援協会事務局長)は,3歳に子どもにも説明すべきと述べました.
沢田貴志先生(港町診療所所長)は,神奈川県の例を引いて,外国人の医療を保障するシステムが必要なことと可能なことを述べました.
大原昌樹先生(綾川町国民健康保険陶病院院長)は,地域医療を守ることにつき具体的に述べました.

伊藤たてお氏(日本難病・疾病団体協議会代表理事)の敢えて脱線して述べられたお話は,強く印象に残りました.倫理委員会が多様なメンバーで構成されているので機能している,若者を引き込む,地域が医師を支える,など.
福山美音子氏(患者の権利オンブズマン)は,患者の苦情を医療者が解決するために間に入って活動していることを話しました.

◆ 疑問

しかし,それらは,「患者の権利法の制定を求めて」というテーマに集約されるべきものだったのでしょうか.

私には何度も何度も聞いたテーマで,2011年にまだ「患者の権利法の制定を求めて」なんですか?,という感想をもちました.
私が小学生の頃,クラスで3週続けて「廊下を走らない」という目標を決めたところ,先生が怒ったことがあります.そのことを思い出しました.

◆ 「患者の権利法」から「医療基本法」へ

「患者の権利」だけを言うと,患者が権利を振りかざして医療者と対立する,という誤解を招きます.
そもそも,「患者の権利」を保障するだけではなく,「医療者の権利」を保障することも必要です.
さらに国,地方自治体,企業の役割等も含めて,広く医療政策の基本を定める「医療基本法」こそ,今の課題です.

シリーズものの映画の最新作が公開されるとき,記憶喚起の意味でしょうか,テレビで旧作を放映することがよくあります.医療事件,医療政策に継続的にかかわってきた弁護士は少数ですから,多くの弁護士にとって今回のシンポジウムは旧作放映程度の意味はあったでしょう.

最新作にあたるものは,10月22日の患者の権利法をつくる会設立20周年記念シンポジウム「みんなの医療基本法」です.
是非,ご参加を!

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-07 23:42 | 弁護士会