弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大分赤十字病院,人工呼吸器のスタンバイモード解除したつもり事故か?

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◆ 報道

大分放送「病院で人工呼吸器正常に作動せず患者が死亡」(2011年10月8日)は,次のとおり報じました.

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「8日午前大分市の病院で入院中の女性患者の人工呼吸器が正常に作動していないことに巡回中の看護師が気づき、女性はまもなく死亡しました。
8日午前8時半ごろ大分市の大分赤十字病院で42歳の入院患者の女性の人工呼吸器が正常に作動していないことに看護師が気づきました。
女性はその後容態が急変しおよそ1時間後に死亡しました。
病院によりますと看護師が女性患者のたんを吸引する際人工呼吸器を、酸素が送られない「スタンバイモード」に変えその後ナースコールが鳴ったため別の病室に行ったということです。
その8分後巡回中の別の看護師が女性患者の人工呼吸器が正常に作動してないことに気づき確認したところ「スタンバイモード」が解除されておらず、酸素は送られていなかったということです。
たんを吸引していた看護師は「スタンバイモードは解除してから別の病室に行った」と話していて、警察は業務上過失致死の疑いもあるとみて当時の詳しい状況を捜査しています。」


◆ 感想

本件で,たんの吸引を行った看護師は,スタンバイモードを解除してから別の病室に行った,と話していますが,スタンバイモードを解除し胸郭の動きに基づいて換気を確認してからアラームの鳴った別室に行くべきです.

看護師が胸郭の動きに基づいて確認していたら,本件事故の原因は,スタンバイモードの解除忘れではない,と言えるでしょうが,もし,胸郭の動きに基づく確認を行っていないのであれば「解除したつもり」の事故とみるべきでしょう.

財団法人日本医療機能評価機構は,2009年12月に,医療安全情報No.37:[[スタンバイ]にした人工呼吸器の開始忘れ]で,「「スタンバイ」のまま患者に人工呼吸器を装着したため、換気されなかった事例が4件報告されています(集計期間:2006年1月1日~2009年10月30日」と報告しました.
対策として,「人工呼吸器を装着する際、換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認する」ことを提案しました.
今回のケースでは,この提案が活かされいなかった可能性があると思います.

たんの吸引は,医師,看護師以外でも行えるようになりますが,必ず胸郭の動きに基づいて換気を確認するよう御願します.

また,体位変換のときも,同様スタンバイモードの解除忘れの危険があり,換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認することが必要です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-09 04:59 | 医療事故・医療裁判