弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連,放射線審議会基本部会の住民の年間被ばく線量上限改定審議に関する会長声明

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文部科学省の放射線審議会基本部会は,住民の年間被ばく線量上限を,現行の年間1ミリシーベルトから年間1~20ミリシーベルトに引き上げる方向で検討していますが,日弁連は,これに反対する会長声明を発表しました.
以下,抜粋紹介いたします.

「ICRPも、放射線被ばくによる確率的影響についてはこれ以下であれば安全であるとされるしきい値はないとするLNT仮説を前提にしている。予防原則の観点からも、被ばく線量は可能な限り低くすることが必要である。

そのような観点から、放射線同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等では、公衆の被ばく上限を年間1ミリシーベルトと定めていた。

今般審議会が根拠としているICRP Publication 111も、「汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のための参考レベルは、この被ばく状況区分に対処するためにPublication 103(ICRP、2007)で勧告された1~20mSvの範囲の下方部分から選定すべきである。過去の経験により、長期の事故後状況における最適化プロセスを制約するために用いられる代表的な値は1mSv/年であることが示されている。」としているのであって、住民の生命・健康保護の見地から、被ばく線量上限の安易な緩和は到底許されない。

したがって、当連合会は、審議会に対しては、今般の被ばく上限の改定をしないことを、文部科学省に対しては、放射線防止法等関連法令における年間1ミリシーベルトの被ばく上限を維持することをそれぞれ求めるものである。」


※ ICRPとは,International Commission on Radiological Protection 国際放射線防護委員会のことです.

※ LNT仮説(Liner Non-threshold Theory)とは.「しきい値なし直線仮説」のことです.

※ ICRP Publication 111とは,“Publ.111 Application of the Commission's Recommendations to the Protection of Individuals Living in Long Term Contaminated Areas After a Nuclear Accident or a Radiation Emergency”のことです.
社団法人アイソトープ協会のサイトに,日本語訳ドラフト「(原子力事故又は放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用(仮題)」が掲載されています.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-19 07:46 | 脱原発