弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

最高裁平成23年10月25日判決(混合診療禁止合憲)

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最高裁で,混合診療禁止合憲の判断がでて,よかったと思います.

日本は,すべての国民が公平・平等に良い医療を受ける環境を保障するために国民皆保険の制度を設けています.
混合診療を認めると,自由診療(ビジネス医療サービス)を広げる力が働き,保険医療が崩壊し,アメリカのように,経済的弱者は十分な医療を受けられないことになります.

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◆ 事案

上告人は,或る施設で,研究としてのLAK療法(患者の血液から分離したリンパ球を増殖・活性化し,患者の体内に戻すことによって,がん細胞を攻撃しようという治療法.活性化自己リンパ球移入療法と称される免疫療法の一種)を,無料で受けていました.

その後,研究としての所定の手続き・報告がなく,一部の患者から実費として金員を研究者個人の口座に振り込ませていたことが発覚し,研究としてのLAK療法は終了となりました.
治療としてのLAK療法は,その施設では混合診療にあたるので,受けられません.

特定承認保険医療機関である県内の大学病院を受診すれば,混合診療にあたらず,LAK療法を受けることができたのですが,上告人は,県内の大学病院を受診することなく,その施設でLAK療法を受ける権利を主張し,訴訟を起こしました.

◆ 判決

ひと言で言えば,1審判決は,観念的な論理で,違憲としました.
控訴審判決は,「保険外併用療養費制度」があることから,生存権侵害にあたらない,などとしました.
上告審は,混合診療を全額自己負担とする解釈は健康保険法全体の整合性の観点から相当とし,控訴審判決を支持しました.⇒判決全文はこちら

◆ 感想

或る程度の有効性と安全性が見込めると判断される医療については,特定承認保険医療機関の「保険外併用療養費制度」があります.これは,保険相当分を「特定療養費」として保険から給付する制度で,混合診療を限定的に認めたものです.

保険適用のない先端的医療は,認可を受けた特定承認保険医療機関で定められた手順で行うことで安全性が担保されます.また,その特定承認保険医療機関に症例が集積され,有効性等が判断されます.普及性,有効性,効率性,安全性,技術的成熟度の実績を見つつ,適切な時期に全面保険導入の可否を検討し,保険医療の枠内に取り込まれます.

本件は,上告人が特定承認保険医療機関である大学病院でLAK療法を受ければ足りたことで,生存権侵害にあたらないと思います.

混合診療禁止の原則を否定することが,一見,患者のためのように思われがちなのですが,全体的長期的にみると,それは,保険医療(公的医療サービス)から自由診療(ビジネス医療サービス)へのシフトを招きます.
すべての国民が公平・平等に良い医療を受ける環境を保障するための仕組みこそが,憲法の求めるところと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-26 01:31 | 医療事故・医療裁判