弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大学病院,心臓手術で残したガーゼが腹部大動脈に移動し患者が死亡,調査により判明

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◆ 事案

大学病院で,2011年5月下旬,80代の女性患者が,大動脈弁を人工弁に交換する手術の際,心臓の出口に置いたガーゼ(横約30センチ、縦約15センチ)1枚が見つからず,レントゲン撮影などでも発見できず,そのまま胸を閉じました.

翌日,患者の両足が冷たくなったため検査したところ,血栓などを発見しました.再手術を行いましたが,その際にも,ガーゼは見つからず,患者は多臓器不全でその翌日死亡しました.

同病院は,当初,患者の死亡は合併症によるものとみていましたが,同病院の手術にかかわっていない別の医師が,8月末,再調査を提案し,調査委員会を設け検証しました.
遺体が既にないため,生前に撮影したコンピューター断層撮影(CT)の画像などを確認したところ,腹部大動脈にガーゼが残っていた可能性が高いことが分かりました
患者死亡の原因は,ガーゼが腹部の大動脈に移動し,血流を妨げた可能性が大きいとのことです.

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◆ 感想

従前,合併症による死亡,術後の血栓塞栓症による死亡と扱われていた症例の中にも,本件のようなケースが含まれていたのかもしれません.

ガーゼの遺残事故は少なくありません.しかし,心臓手術のガーゼが腹部大動脈に移動した例は,いままで報告されていないと思います.その意味で,本件の検証は大きな意義があります.
ガーゼを残して死亡事故につながる可能性があるとわかった以上,今後いっそうガーゼを残すことがないよう,注意をはらう必要があるでしょう.

西日本新聞「福大病院で医療ミス 福岡大病院ガーゼ残す 患者死亡」(2011年11月18日)ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-19 04:04 | 医療事故・医療裁判