弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

薬害イレッサ東京高裁判決についての毎日,読売,朝日の各社説

b0206085_844141.jpg薬害イレッサ東京高裁判決について,毎日,読売,朝日の社説を読みました.

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◆ 毎日新聞社説「イレッサ高裁判決 安全対策に逆行する

「薬の副作用と因果関係がある可能性ないし疑いはあるが、完全には断定できないので法的な不法行為はない--。そう言われたら訴訟など起こせなくなると薬害被害者は思うに違いない。イレッサ訴訟東京高裁の判決はそういう内容だった。」

これが毎日新聞社説の冒頭です.

「そもそも1審の主な争点は、承認当時のイレッサの添付文書には副作用の間質性肺炎が目立たない所に記載されていたことの妥当性についてだった。国に対する賠償請求を棄却した大阪地裁判決ですら「添付文書の重大な副作用欄の最初に間質性肺炎を記載すべきであり、そのような注意喚起が図られないまま販売されたイレッサは抗がん剤として通常有すべき安全性を欠いていたと言わざるを得ない」と指摘した。」

 ところが、東京高裁は目立たない所でも記載されていれば妥当とする判断を示した上、「目に訴える表示方法を違法性の判断基準とするならば、それはがん専門医の読解力、理解力、判断力を著しく低く見ていることを意味するのであり、真摯(しんし)に医療に取り組む医師の尊厳を害し相当とは言えない」と断じた。現実には専門医らの処方によってイレッサ販売後に多数の患者が間質性肺炎で死亡しているのにである。しかも販売当初の添付文書には、専門医に使用を限定するとの記述はなかった。

 たった2回の審理で結審した結果がこれだ。弁護団でなくとも、東京高裁判決はどうなっているのかと思えてくる。」


東京高裁判決は「どうかしてぜ」という話です.

◆ 読売新聞社説「イレッサ判決 情報開示の徹底は国の責務だ

読売新聞社説は,「副作用情報の医療現場への周知徹底」を強調しています.

「1審の東京地裁は、「適切な注意喚起を怠った」として、国と製薬会社双方に賠償を命じた。同じ内容の訴訟で、大阪地裁は国の対応について、「万全でないが、違法とまではいえない」として、製薬会社にのみ賠償を命じた。

 今回の東京高裁判決は、臨床試験などでの死亡例を検討し、承認時はイレッサとの因果関係は明確でなかったとの見方を示した。

 因果関係がはっきりしない以上、「重大な副作用」の記載については、専門知識のある医師向けであることも踏まえ、4番目でも問題はなかった、と判断した。

 期待される医薬品を、一刻も早く患者に投与できる環境の整備は必要だ。新薬にすがりたいがん患者の思いに応えることも、医療の役割である。

 その際、忘れてならないのは、副作用情報の医療現場への周知徹底である。医師は副作用の危険性などを患者に十分説明して投与する義務がある。

 厚労省は、新薬のPRに走りがちな製薬会社に、副作用というマイナス情報も隠さず開示するよう、指導を徹底すべきだ。」


◆ 朝日新聞社説「イレッサ判決―薬の安全高める責任

朝日新聞社説は,①今回の判決がひとり歩きして安全への配慮がおろそかになる心配はないだろうか,と疑問を提起し,②知識のない医師も処方していたこと,十分な経験をもつ医師に使用を限るとの記載が添付文書に加わったのは、被害が広がった後だったことを指摘しています.

「医薬品については、科学的証明が不十分でも、最悪の事態を想定して安全対策にあたる「予防原則」の考えが定着してきている。そのことと、賠償責任の有無は区別して考えるべきだというのが判決の立場だ。

 結果として、安全への配慮がおろそかになる心配はないだろうか。因果関係や法的責任を厳格にとらえた今回の判決がひとり歩きして、企業や行政がやすきに流れてはならない。」
(中略)
「「専門医は認識できた」との判断も論議を呼ぶだろう。裁判で争った患者は専門医にかかっていたが、イレッサは「効果が高く、副作用が少ない」と評判になり、深い知識のない医師も処方していた。十分な経験をもつ医師に使用を限るとの記載が添付文書に加わったのは、被害が広がった後だった。

 一審判決は、「一般の医師」に文書がどう読まれたかを検討し、危険性は伝わらなかったと判断している。添付文書は、薬の情報を医療現場に届ける最も重要な手段だ。患者側の上告を受けて、最高裁がどんな判断を示すか注目したい。 」


社説の内容はそのとおりなのですが,夢の新薬と煽ったのはマスコミなのに,他人事のように書いているのが,何か釈然としません.マスコミ自身は騙された側と思っているのでしょうが,マスコミの宣伝記事に騙されたという感覚をもっている方も少なくありません.

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-20 21:45 | 医療事故・医療裁判