弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

市立半田病院,主治医の病理検査結果(胆のうがん)見落とし事案で和解

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◆ 事案

患者(60歳代,男性)は,2009年3月に市立半田病院で胆石と左鼠径ヘルニアの手術を受けて退院しました.
その後の病理検査で,胆のうがんと判明しました.
主治医は,患者が再び診察を受けに来た際に,検査結果を確認しませんでした.
患者は,2010年12月に左下腹部の痛みとしこりを訴えて来院し,コンピューター断層撮影(CT)検査で病変が判明しました.
治療を開始しましたが,患者は,2011年6月に胆のうがんのため死亡しました.

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◆ 対応

半田市は,2011年11月29日,患者の遺族に3000万円を支払って和解すると発表しました.
市立半田病院によれば,「検査直後からがん治療を始めていれば,最善の手当てが出来た可能性があった」とのことです.
主治医は別の病院に勤務中で,半田病院の調査に「当時のことはよく覚えていない」と答えたそうですが,市立半田病院は,事故の原因に関し,主治医の思い込みや不注意を挙げており,関係者の処分を検討する,とのことです.
市立半田病院は,医師が病理検査の結果を患者に説明後,説明内容を電子カルテに記録するなどの再発防止策を講じたそうです.

読売新聞「がん検査結果、主治医見逃す…遺族に3千万賠償」(2011年11月29日)ご参照
中日新聞「がん結果を患者に教えず 市立半田病院」(2011年11月29日)ご参照

◆ 感想

主治医は,自らオーダーした病理検査結果を適時に見るべきだと思いますが,現実には患者が来院するまで病理検査結果を見ない主治医も少なくないでしょうから,病理医のほうでも,病理検査結果で「がん」と判明した時点でただちに主治医に連絡するシステムに改めたほうがよいと思います.

本件は,患者が次回来院した時点でも,主治医は病理検査結果を見落としてしまったのですから,注意義務違反が認められます.

私も,病理検査結果を主治医が見落とした事案の依頼を受け,示談解決したことがあります.
病理検査の結果が診療に活かされなかったため,治療が遅れたという事態は,本当に無念です.

【追記】

毎日新聞「市立半田病院の医療ミス:病院長ら3人を処分 /愛知」(2011年12月28日)は,次のとおり報じています.

「半田市立半田病院で09年、病理検査で胆のうがんが判明した60代の男性患者に検査結果を知らせず、適切な治療ができなかった医療ミスで、市は27日、監督責任者の病院長と副院長を文書訓告、外科統括部長を口頭注意の処分とした。

 主治医は09年3月末に退職し、別の病院に移ったため処分の対象にしなかった。【新井敦】」


谷直樹
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by medical-law | 2011-11-29 22:04 | 医療事故・医療裁判