弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

黒石市国保黒石病院,看護師が薬をハサミで1錠ずつに切り分け,患者が包装ごと飲み込んだ死亡事案で和解

b0206085_20233743.jpg◆ 事案

20011年5月16日,貧血の症状で 黒石市国民健康保険黒石病院に検査入院していた80代男性患者は,看護師がベッドを離れた間に,処方薬を包装ごと飲み込み,それが元となって消化器官から出血し,同18日にショック死した。
看護師がハサミで1錠ずつに切り分け,患者のベッド脇のテーブルに置いたことが誤飲事故の要因となった可能性が高い,とのことです.

読売新聞「1錠ずつ切り分け危険」(2011年12月9日)ご参照

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◆ 対応

毎日新聞「医療事故:薬誤飲、80代男性死亡--国保黒石病院 /青森」(2011年12月9日)は,以下のとおり報じています.

 「遺族側は「24時間看護をうたいながら、薬を患者の近くに置き放したのは医療管理の不備」として代理人を立て損害賠償を求めた。これに対して、市側は患者の自己責任などを挙げ反論したが、結局「国の通達に照らし、当病院に薬剤管理上の落ち度があった」(沖野俊一事務局長)として、賠償金の支払いで11月9日に和解した。

 しかし、死亡に至る3日間の病室内での処置や医療体制などの詳細をはじめ、交渉の経過や賠償額の妥当性について、病院側は「和解条項に『和解内容について公表しない』とあり、遺族も公表を望んでいないので明らかにできない」(沖野事務局長)と語るのみ。和解によって、再発防止策の検討が難しくなることにつながり、市民の批判を呼びそうだ。」


黒石市は,遺族に和解金1500万円を支払うことになりました.

◆ 感想

看護師がPTP 包装の薬をハサミで1錠ずつに切り分け,患者のベッド脇のテーブルに置いたことに驚きました.PTP包装シート誤飲事故はこれまでも繰り返し起こり,切り分けるな,とさんざん言われていました.

独立行政法人国民生活センターのチラシには,つぎのとおり記載されています.

● 薬の包装は、プラスチックにアルミなどを張り付けたPTP 包装シートと呼ばれるものが主流になっています。薬をPTP 包装ごと飲み込んでしまい、のどや食道などを傷つけたという誤飲事故が後を絶ちません。
● PTP 包装の薬をハサミで1 錠ずつに切り分ける人がいますが、飲み込みやすいサイズになってしまう上に、切った角が鋭くなり危険です。1錠ずつに切ることはやめましょう。
● 1 回に複数の薬を服用する場合は、あらかじめ病院や薬局で1 回分の薬をPTP 包装から取り出して一袋に入れる「一包化」にしてもらうと、飲み忘れだけでなくPTP 包装の誤飲も防ぐことができます。薬剤師に相談してみましょう。


厚生労働省医政局総務課長,厚生労働省医薬食品局総務課長,厚生労働省医薬食品局安全対策課長の連名で,平成22年9月15日,「PTP包装シート誤飲防止対策について(医療機関及び薬局への注意喚起及び周知徹底依頼)PTP包装シート誤飲防止対策について」という通達がでています.

 医薬品のPTP包装シートについて、医薬品を包装シートから押し出すことなく服用した場合、喉や食道などを傷つけるおそれがある旨、「注意!高齢者に目立つ薬の包装シートの誤飲事故」(平成22 年9月15 日付独立行政法人国民生活センター報告書。http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100915_1.html)において指摘されています。

つきましては、このようなPTP包装シートの誤飲を防ぐため、下記の留意事項について、貴管下の医療機関及び薬局への周知方よろしくお願いします。
なお、PTP包装シートの包装・表示等の技術的な改善等については、別添のとおり、日本製薬団体連合会等に依頼したことを申し添えます。
               記
1.PTP包装シートには誤飲防止のため、1つずつに切り離せないよう、あえて横又は縦の一方向のみにミシン目が入っていることから、調剤・与薬時等に不必要にハサミなどで1つずつに切り離さないよう留意すること。
2.患者及び家族等に、可能な限り1つずつに切り離さずに保管し、服薬時にはPTP包装シートから薬剤を押し出して薬剤のみを服用するよう、必要に応じて指導すること。特に、調剤・与薬時に薬剤数に端数が生じ、やむを得ず、1つに切り離して調剤・与薬を行う場合には、PTP包装シートの誤飲がないよう、十分指導すること。
また、高齢者、誤飲の可能性のある患者及び自ら医薬品の管理が困難と思われる患者に対しては、家族等介護者に対して注意喚起(内服時の見守り等)を行うこと。
3.高齢者、誤飲の可能性のある患者及び自ら医薬品の管理が困難と思われる患者については、必要に応じて一包化による処方を検討すること。なお、薬局においても一包化による調剤の対象となるかどうかを検討し、必要に応じて処方医に照会の上、一包化による調剤を実施すること。


「国民生活センターセンターが2000年4月から10年9月まで全国で実施した調査で把握した事故は86件。患者が携帯するため自らハサミで切ったことなどが要因だった。」(前記読売新聞)とのことですが,医療機関で看護師がハサミで切り分けることがあるとは,にわかに信じられない事故です.
80代高齢患者の自己責任という主張はとおるものではありません.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-10 00:34 | 医療事故・医療裁判