弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

佐世保市総合病院,酒気帯び運転で衝突事故の医師を懲戒免職とせず

b0206085_1861465.jpg◆ 報道

朝日新聞「酒気帯び諭旨免職」(2012年1月14日)は,次のとおり報じています.

「◆数少ない専門医 佐世保市処分
 嘆願受け懲戒免見送り

 佐世保市は13日、酒気帯び運転で罰金30万円の略式命令を受けた市総合病院管理診療部長の医師(51)を同日付で停職6カ月の懲戒処分とした。併せて本人から出された辞職願を受理し、諭旨免職にした。

 市によると、医師は今月3日夜、自宅でビールを飲んで乗用車を運転し、交差点で接触事故を起こした。

 同市は飲酒運転をした職員は原則として懲戒免職とする方針を定めている。軽い処分とした今回の決定について江口勝美病院長は、この医師が県内に2人しかいない小児血液疾患の専門医で、患者や家族からは処分を軽くしてほしいと求める嘆願書が出ていると説明。「引き続き専門医療に携われるよう特例として判断した」と述べた。

 医師は市側におよそ94万円の退職金を返上する意思も示しているという。 」


◆ 感想

2006年の福岡市職員による飲酒運転死亡事故に端を発し,酒気帯び運転で懲戒解雇処分を行う地方自治体が増えました.
人事院は,2008年4月,酒酔い運転で人身事故を起こした場合は一律免職,その他のケースでは免職,停職,減給とする方針を示しましたが,酒気帯び運転で懲戒解雇処分となることが少なくありません.

しかし,もともと,業務外のことを理由に使用者が処分を行うのは例外です.
一口に酒気帯び運転といっても,その態様はまちまちです.
酒気帯び運転は悪いことですが,つねに懲戒解雇という重い処分が相当とはいえません.
裁判所は,具体的な態様に応じて,処分の合理性を判断しています.懲戒解雇処分が取り消されるケースが相次いでいます.

本件は,衝突事故を起こしていますが,人身事故ではありません.また,呼気1リットル当たり0・15ミリグラムを著しく超えるアルコールを検出したとは報じられていません.この件で,仮に懲戒解雇処分を行ったとすれば,裁判では取り消される可能性が高かったと思います.佐世保市が懲戒解雇処分としなかったことは適切な判断だと思います.

数少ない専門医であることから特別に配慮したように報じられていますが,普通の医師であっても,普通の公務員であっても,人身事故を起こさず悪質性も高くない事案では,裁判例を尊重し,同様に懲戒免職とすべきではない,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-15 11:59 | 医療