弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

長崎大学病院も「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に違反

b0206085_1031086.jpg毎日新聞「再生医療:長崎大学病院の臨床研究、手続き不備で中止」(2012年1月19日)は,次のとおり報じています.

「長崎大学病院(長崎市)は19日、ヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床研究を、厚生労働省の指針が定める国への意見照会をせずに実施していたと発表した。既に研究は中止している。

 病院によると、08年7月~11年7月、秋田定伯・形成外科講師や磯本一・光学医療診療部准教授のグループによる2研究で、患者の脂肪を収集し、幹細胞を含む脂肪細胞を抽出して体に戻す治療を、放射線障害などの患者17人に実施した。

 厚労省の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」では、研究施設の倫理委員会の他、国の審査も義務付けている。病院は「扱ったのはヒト分化細胞で幹細胞を豊富に含むものではなく、脂肪細胞を他の組織から分離する最小限の操作で指針の対象外と判断した」という。健康被害は確認されていない。

 11年7月、金沢大の研究で手続きの不備が明らかになり、長崎大学病院でも調べた結果、判明した。【蒲原明佳】」


患者の皮下脂肪から細胞を取り出し,幹細胞を濃縮した後、体に戻すという臨床研究は,ヒト幹細胞臨床研究の実施にあたりますから,研究機関の長は,まず倫理審査委員会の意見を聴き,次いで厚生労働大臣の意見を聴いて,当該臨床研究の実施等の許可又は不許可を決定するとともに,当該臨床研究に関する必要な事項を指示しなければなりません.

長崎大学病院のこの臨床研究については,院内の倫理委員会は承認していたはずですから,院内の倫理委員会に,「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」を正しく理解している人が誰1人いなかったということになります.それは,大きな問題です.

長崎新聞「国に照会せず再生医療の臨床研究 長崎大学病院」(2012年1月19日)によれば,「同病院は、院内の倫理委員会に適切な助言をする委員会を設置するなど再発防止策を実施。手続きをやり直し、研究を続ける方針を示した。」 とのことです.

昨年の金大の事件のとき,私は,ブログに「ヒト幹細胞の臨床研究以外にも,研究と倫理指針の問題はありますので,倫理指針を理解し尊重する体制を確立することが望まれると思います.それは,金大に限ったことではないと思います.」と書きましたが,金大と長崎大学病院に限った特別な話とは思えません.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-20 20:58 | 医療