弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

横浜地裁平成24年1月19日判決,神奈川県立循環器呼吸器病センターの急性大動脈解離見落とし事故で請求認容

b0206085_912594.jpg◆ 事案

患者(男性,当時44歳)は,2007年11月24日朝,胸の痛みを訴え地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立循環器呼吸器病センターに救急搬送されました.
医師に狭心症の疑いと診断されて入院.CT検査は行われませんでした.
患者は,翌日朝,急性大動脈解離による心原性ショックで死亡しました.

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◆ 判決

横浜地裁民事4部は,2012年1月19日,同センターの開設者である地方独立行政法人神奈川県立病院機構に対し,約7240万円の損害賠償を命じました.

機構側は「痛みの内容は急性大動脈解離の症状に合致せず,CT検査は必要なかった」などと主張していましたが,判決は,「男性は狭心症の治療薬を服用しても痛みが消えないと訴えており,急性大動脈解離と思われる所見も現れていた」と指摘し,入院後に担当した医師について「CT検査を受けさせる義務を履行しなかった点で過失があり,過失がなければ救命は十分可能だった」と,医師の過失と患者の死亡との間に相当因果関係があることを認めました.

毎日新聞「損賠訴訟:救急搬送後死亡「過失なければ救命」地裁が県立病院機構に7240万円支払い命じる /神奈川」(2012年1月20日)ご参照

◆ 感想

急性大動脈解離は,放置すれば24時間以内に約半数が亡くなる疾患で,発症後の死亡率は1~2 %/時間と言われています.
急性期は疼痛が主症状であり,殆どの例で発症時に,胸部・背部の激痛を訴えます.胸の痛みを訴えて搬送された男性について,急性大動脈解離は鑑別すべき疾患の一つです.

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)」は,「救急の現場では,常に大動脈瘤・大動脈解離を念頭に置くことが必要である.さらに,もし瘤や解離との関連を疑ったら,いたずらに時間を浪費する事なく,超音波検査などの何らかの画像診断で速やかに診断をつけ,緊急手術も考慮することが必要である.」と指摘しています.

急性大動脈解離の臨床症状は多岐にわたり,痛みの内容で急性大動脈解離を除外することはできませんから,「痛みの内容は急性大動脈解離の症状に合致せず,CT検査は必要なかった」という機構の主張には無理があります.
本件は,控訴したとしても,おそらく高裁でも同様の判断になるのではないかと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-23 02:34 | 医療事故・医療裁判