弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

愛媛新聞社説,「新型インフル法案 安易な権利制限は許されない」

b0206085_6311269.jpg政府は,3月9日,新型インフルエンザの発生時に強力な私権制限を命じるための特別措置法案を閣議決定し,同法案は衆議院に提出されています.
日弁連,新型インフルエンザ対策のための法制に関する会長声明」で書いたとおり,この法案はきわめて問題点です.
しかし,この法案についてのマスコミの扱いが小さく,このままでは,十分な審議もなく,憲法違反の疑いの強いこの法案が今国会で成立してしまうことになります.

愛媛新聞社は,社説「新型インフル法案 安易な権利制限は許されない」(2012年3月15日)で,患者本人への対処を超え,緊急時の社会機能維持を狙った本法案の危険性を次のとおり指摘しています.
 
「毒性や感染力の強い新型インフルエンザに対する危機管理の取り組みを定めた特別措置法案が閣議決定され、国会に提出された。

 新型インフルエンザの発生時、政府が緊急事態を宣言でき、全国民を対象に公費で予防接種する。予防接種は強制でなく努力義務とし、発生から半年以内に全国民分のワクチンを生産する体制を2013年度中に確立するという。

 留意したいのは、物資の流通や施設の使用など平常時は優先される私権が制限され、一部罰則を科す規定も盛り込まれていることだ。いわば患者本人への対処を超え、緊急時の社会機能維持を狙ったと言えよう。

 だが、そもそも国民の行動をどこまで制限すれば感染拡大を防げるのか。法案は科学的根拠に乏しい割に、強制力が強いとの印象が拭えない。

 09年、A型の新たなインフルエンザウイルス(H1N1)の感染が世界的に拡大したのは記憶に新しい。日本では8月に流行入りし、翌年3月までの感染者は推定で2千万人を超えた。この経験を基に、例えば感染防止策として集会の中止を要請するためにも、自治体から法的根拠を求める声が上がっていた。

 法案によると、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの流行を確認すれば、国や自治体は対策本部を設置。国民の生命や社会に深刻な被害の恐れがあるとき、首相が2年以内の期間や区域を定め緊急事態を宣言する。

 期間中は予防接種を実施する一方、都道府県知事は外出自粛や人の集まる施設を使わないなど住民の行動の制限を要請できる。病院が足りない場合、土地や建物を借りて医療施設を設置でき、所有者が正当な理由なく同意しないときは強制的に使える。

 また、必要な医薬品や食品の売り渡し要請、収用、保管を命令でき、従わずに隠したり運び出したりすれば、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されもする。

 緊急事態の宣言が極めて重い判断なのは言うまでもない。だが、ウイルスの性質を短期間で把握するのは困難だ。「深刻な被害の恐れがあるとき」とは、どんなケースを想定しているのか。「正当な理由でない」正当とは、何を意味するかも曖昧だ。

 同法はインフルエンザにとどまらず、強毒性の新たな感染症にも適用される。それだけに安易な権利制限は許されない。時の為政者の都合で判断基準が変わるなら、危ういと言うほかない。恣意(しい)的判断が入り込む余地を可能な限りつぶしておくべきだ。
 国民の権利を制限するという以上、法が想定するケースを明確にし、緊急時に備え理解を得ておく周到な準備が、国や自治体に求められる。」


愛媛新聞は,社説「新たな伊方原発訴訟 国策追従の過ち 司法も清算を」(2011年12月9日)で,原発訴訟を国策追従で終わらせてきた司法=裁判官の責任を指摘していました.愛媛新聞社説は,今回も適切な指摘を行っています.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-17 19:17 | 医療