弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連,「法曹人口政策に関する提言」

日弁連,「法曹人口政策に関する提言」_b0206085_20562080.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年3月15日,「法曹人口政策に関する提言」を発表しました.

提言は,弁護士人口を検証する前提としての「弁護士像」につき検討した上で,「公共性の実践」,「法的需要」,「法曹の質の維持」の面から,これまでの弁護士人口急増政策の評価を行っています.

「公共性の実践」の面からは,これまでのような弁護士急増は必要でなく,司法基盤の整備や弁護士会の態勢構築を進めつつ,状況に応じた漸増を図ることが有効かつ適切であると評価できる,としています.

「法的需要」の面からは,弁護士急増政策の前提となった需要予測が外れ,新人弁護士の就職難という形で需給ギャップが生じている事態を直視し,弁護士人口の急増から漸増へと,速やかな軌道修正を行う必要に迫られていると評価し得る,としています.

「法曹の質の維持」の面からは,もはやこれまでのような急増を維持することはできず,増員のペースを漸増に改める必要がある,としています.

1000名という議決をあげた単位会も少なくありませんが,多様な意見があるため,日弁連としては1500名で妥協しています.

提言全文は19頁もありますので,目次がほしいところです.
要旨は,以下のとおりです.

「1.弁護士のアイデンティティは「プロフェッション」性、すなわち、高度の専門性と公益的性格にある。したがって、弁護士には市民から信頼されるに相応しい学識、応用能力と弁護士職の公益的性格の自覚が求められる。そのようなプロフェッション性から導かれる「質」を確保するためには、必要な水準に達しない者にまで弁護士資格を付与することがないように、司法試験の合格者数を、法曹養成制度の成熟度に見合うものにしなければならない。

また、「市民にとってより身近で利用しやすく頼りがいのある司法」を実現するためには、現実の法的需要や司法基盤整備の状況ともバランスの取れた法曹人口の「適正さ」を確保すべきである。

2.現状では、法曹養成制度の成熟度、現実の法的需要、司法基盤の整備状況のいずれに対しても、また裁判官・検察官の増員の程度と比べても、弁護士人口増員のペースが急激であり過ぎる。そのため法曹養成過程における「法曹の質」の維持への懸念、新人弁護士の「就職難」等によるOJT不足から実務経験・能力が不足した弁護士が社会に多数増えていくことへの懸念、法曹志望者の減少などの深刻な問題を引き起こしている。市民のための司法を実現するためには、これらの問題を解決する必要がある。そのためには、いまや法曹人口の急増から「状況に応じた漸増」へと、速やかに移行すべきである。

司法制度改革推進計画(2002年3月19日閣議決定)のうち「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す」との指針を示した部分は、現状ではもはや現実的ではなく、抜本的に見直す必要がある。

3.司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである。

司法試験合格者の減員は法曹人口の減少を直ちに意味せず、急増か漸増かという増員ペースの問題である。司法試験の年間合格者数を1500人にまで減員しても、2027年頃には法曹人口は5万人規模に達し、2053年頃には6万3000人程度で均衡する。年間合格者数を1000人にしても、2043年頃には法曹人口は約4万9000人に達し、2053年頃には4万2000人程度で均衡する。

4.将来的な法曹人口は、現実の法的需要や司法基盤整備の状況、法曹の質などを定期的に検証しながら、検討されるべきである。その検証を踏まえて、司法試験合格者数についても定期的に検討すべきである。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-19 02:13 | 弁護士会