弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

上市町,原因が特定できない胎児死亡で,救命可能性を否定できず,1000万円和解

b0206085_2045483.jpg読売新聞「死産巡る賠償請求で和解 病院運営の上市町1000万円支払い」(2012年3月20日)は,次のとおり報じています.

「上市町法音寺の「かみいち総合病院」で昨年1月、町内の女性が死産をし、病院の運営主体の町が女性と夫に1000万円の賠償金を支払うことで和解していたことが19日、分かった。町議会3月定例会最終日の全員協議会で町が明らかにし、この日、賠償金の支払いを盛り込んだ今年度町病院事業会計補正予算案を本会議に提出し、採択された。

 かみいち総合病院によると、昨年1月、女性が出産中、胎児が子宮内で死亡した。同病院は、県内の基幹病院に胎児の遺体を搬送、病理解剖が行われたが、死産の原因は分からなかった。同2月には、県内の産科医ら複数の外部専門委員に資料を渡し、原因究明を委嘱したが、特定できなかったとしている。

 一方、病院は昨年5月から、和解交渉を進め、今年2月下旬に和解した。損害賠償の支払いに応じた理由について、同病院事務局の土肥真一局長は「原因は特定できていないが、胎児が助かっていた可能性も否定できないため、慰謝料請求に応じた」と話している。」


胎児死亡の原因を特定するのは困難な場合が多いと思いますが,妊娠経過が順調で,陣痛が開始している状況では,適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高いと考えられる場合もあります.

人は,出生により権利義務の主体となります.
胎児は人ではないため,胎児死亡は,母体に対する傷害として評価されます.
しかし,適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高い場合は,対応が遅く娩出時期が遅れ胎内で死亡したためかえって低い賠償金額となるのは不合理です.適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高い場合は,胎児死亡でも人の死亡に近づけた賠償金額が相当でしょう.

本件は,原因は特定できていないが,胎児が助かっていた可能性も否定できないため,1000万円で示談したとのことなので,金額は適切と思います.

なお,私が原告代理人として担当した東京地裁平成14年12月18日判決(判例タイムズ1182号295頁)は,適切な時期に娩出していれば生きて生まれた可能性が高い場合で,3200万円の賠償を命じています.この判決は,慰謝料2800万円,葬儀費用100万円,弁護士費用300万円を認めています.
もちろん,適切な時期に娩出していれば,胎児死亡を回避できた可能性の高低によっても違い,胎児死亡すべてにあてはまるものではありませんが,胎児死亡における損害評価の方法を示唆する判決です.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-20 16:34 | 医療事故・医療裁判