弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

山形地裁平成24年3月13日判決,氷河期に突入した医療過誤訴訟

b0206085_18254489.jpg山形地裁平成24年3月13日判決は,原告の請求を棄却しました.
原告代理人弁護士坂野智憲先生は,「氷河期に突入した医療過誤訴訟」と題して,判決の問題点を指摘しています.

裁判所は6月18日午後8時32分の時点で過失を認めました.
実際の娩出は翌6月19日午後3時18分(出生時のアプガースコアは3点).
ところが,裁判所は,仮にその時点で急速遂娩していたとしても重度の後遺症を残さなかった高度の蓋然性があったとは言えないという「論理」で,請求を棄却したそうです.
その「論理」が通用するなら,分娩事故ではほとんどすべてのケースで過失と結果との相当因果関係が否定されることになりかねません.

◆ 報道

毎日新聞「医療過誤訴訟:原告の訴え棄却 県立新庄病院相手取った損賠に地裁 /山形」(2012年3月14日)は,次のとおり報じました.

「県立新庄病院での出産時に担当医のミスで重度の後遺症を負ったとして、生まれた男児と両親が県に約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、山形地裁(石栗正子裁判長)は13日、原告の訴えを棄却する判決を言い渡した。

 判決によると、母親は06年6月14日、出産のために同病院に入院。同19日、担当医が緊急の帝王切開を行ったが、男児は重度の脳性まひなどを負った。原告は「早く帝王切開すれば重度の後遺症は防げた」と主張していた。

 判決は、胎児の心拍数をみるモニターの記録などを吟味。同18日夜の段階での病院側の「(帝王切開実施の)決定は困難だった」という主張については、「判断が困難だった事情は見当たらない」とした。一方で、18日夜の時点で実施を決めたとしても「高度の後遺障害を免れた可能性があるとはいえない」と指摘。「過失と後遺障害の間に因果関係があるとはいえない」とした。【安藤龍朗】」


◆ 「仙台 坂野智憲弁護士日誌」


坂野智憲先生の以下のブログを是非お読みください.

氷河期に突入した医療過誤訴訟その1 過失あれども責任なし
氷河期に突入した医療過誤訴訟その2 「生存していた相当程度の可能性の侵害論」は麻薬のように医療過誤訴訟を蝕んでいる
氷河期に突入した医療過誤訴訟その3 裁判所が医療過誤訴訟だけに過酷なほど高い証明を要求するのは何故なのだろう
氷河期に突入した医療過誤訴訟その4 盲目的鑑定一本主義 裁判官にとって鑑定書はイスラム教徒にとってのコーランのようなものらしい


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-21 01:15 | 医療事故・医療裁判