弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日弁連,司法制度の根幹を揺るがす法務省新規採用者数大幅削減の見直しを求める会長声明

b0206085_19585816.jpgもともと仕事量のわりに人が足りない検察官や刑務官を削減したらどうなるかわかりそうなものですが,行政改革実行本部は容赦しません.
例年70~80人が採用されてきた検察官の新規採用が20数名程度,刑務官の新規採用も360人程度(職員数で約500名減)となりそうなのです.

そこで,日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年3月21日,「司法制度の根幹を揺るがす法務省新規採用者数大幅削減の見直しを求める会長声明」を発表しました.以下のとおりです.

「2012年3月6日の行政改革実行本部における副総理と総務大臣の発言によると、政府は社会保障・税一体改革における消費税引き上げに向けて、2013年度の公務員採用を大幅に抑制する方針とされている。

法務省では2009年度新規採用実績1973人に対して、2011年度は66パーセント(1304人)、2012年度は74.7パーセント(1475人)に抑制されてきた。

今回予定されている大幅抑制策によれば、例年70~80人が採用されてきた検察官が20数名程度となり、刑務官の新規採用も360人程度(職員数で約500名減となることが予測される。)になることが予測されている。

当連合会は、国家公務員の採用を短期間に極端に抑制することは、行政にかかわる人材の養成の面や行政サービス、なかんずく社会保障分野におけるサービスの低下を招くのではないかと懸念するところである。国家公務員数全体の抑制を図る政策全般の当否については一時措くとしても、少なくとも法務行政に関わる人員の極端な削減については、その影響を慎重に検討することが必要である。すなわち、法務省の行っている業務は人によらざるを得ず、刑事少年司法の捜査、公判・審判、矯正保護の過程を担っており、この観点から検討を加えることが求められる。

まず、検察官については、全国の検察庁で法曹資格を有する検察官が常勤していない検察庁支部は128か所(当連合会調べ。2010年8月末現在)に及んでおり、当連合会は検察官採用の大幅増員によって検察官ゼロ支部の解消を求めてきた。今回の検察官の採用の抑制は検察官の1000名程度の大幅な増員を求めた2001年6月の司法制度改革審議会意見書に明確に逆行するものであって断じて許されない。

また、刑務官の採用の抑制は、名古屋刑務所事件を契機として設置され、刑事施設における人権保障の充実と同時に大幅な刑務官増員を求めた2003年12月の行刑改革会議提言に明確に反している。

このような大幅な職員採用の抑制は公務員の年齢構成のアンバランスを生じ、世代間の専門的知見の継承にも支障を生じる可能性がある。検察官不足は警察の捜査に対するチェック体制に悪影響を及ぼし、違法捜査やえん罪などの人権侵害を生み出しかねない。

また、現状においても、刑務官不足は深刻であり、その労働条件は年休取得も困難であり、超過勤務と休日出勤が常態となっており、極めて過酷なものと言える。行刑改革で設置された市民による刑事施設視察委員会は、各地の施設の実情を踏まえ、その改善のため職員の増員を求める意見を繰り返し提出してきた。このような職員の劣悪な労働条件が施設内のストレスを高め、刑務官による被収容者への人権侵害や被収容者同士の保安事故などの増加の原因となりかねない。

仮に職員採用数の減少を求める必要性があるとしても、それぞれの職務の重要性と業務量・密度を考慮して慎重に進めなければ、国の司法制度の根幹に関わる業務に著しい弊害をもたらす現実的な危険性がある。当連合会は、政府に対し、法務省の新規採用者数大幅削減については、上記の観点から抜本的にこれを見直すよう強く求めるものである。

*参考
 刑務官の新規採用人数が360名程度になることが予測されているが、2010年度までの刑務官の新規採用人数は、次のとおりである。
 2006年度…934名
 2007年度…941名
 2008年度…1073名
 2009年度…1058名
 2010年度…1230名」


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-23 00:34 | 弁護士会