弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

青森市民病院のロタウイルス性胃腸炎による女児死亡訴訟和解報道を読んで

青森市民病院のロタウイルス性胃腸炎による女児死亡訴訟和解報道を読んで_b0206085_312754.jpg毎日新聞「青森市民病院の女児死亡訴訟:市が和解金支払いで合意 /青森」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「07年に青森市民病院で当時1歳の女児が医療過誤で死亡したとして、両親が青森市に損害賠償を求めた青森地裁(浦野真美子裁判長)の訴訟で、市が原告側に和解金を支払うことで合意したことが18日分かった。

 原告側代理人によると、原告は同病院が適切な処置を行わなかったとして、約4500万円の損害賠償を請求していた。和解金は市議会の承認を経て7月ごろ支払われる予定。和解の合意は16日で、金額は明らかにされていない。

 訴状によると、女児は07年3月24日、青森市の母の実家で嘔吐(おうと)し、同病院で点滴を受けた。その後も嘔吐や下痢があり、25日に再受診したが、「嘔吐が止まれば下痢があっても来診する必要はない」と嘔吐止めを処方された。下痢は26日も続き、市内の別の病院で「大変危険な状態」と診断され、市民病院に救急搬送されたが、同日夜に多臓器不全で死亡したとしている。【宮城裕也】」


3月24日に,嘔吐による脱水に対し点滴で対処したのは,普通です.

3月25日の「嘔吐が止まれば下痢があっても来診する必要はない」と嘔吐止めを処方された,というのは,もう少し慎重な説明であるべきと思います.
吐くものがなければ嘔吐は一応治まりますが,下痢が続いて,元気がない,ぐったりしている,うとうとしている,などの状態であれば,緊急受診の必要があるでしょうから,慎重な説明をすべきでしょう.

提訴時の報道では,3月26日にも市民病院に行っているのですが,診てもらえず,個人病院を受診して,市民病院に救急搬送され,ロタウイルスによる重い脱水症状を合併したウイルス性胃腸炎と診断されています.
市民病院の医師は,「3月」「1歳の小児」「嘔吐」「下痢」から,ロタウイルス性胃腸炎の可能性も考えたでしょうし,脱水の危険もわかっているはずですから,3月26日には,患児を診るべきでしょう.

日本ではロタウイルス性胃腸炎で年間10~20人死亡していると推定されていますので,入院治療しても必ず救命できたとまでは言えませんが,本件は適切な医療を受けられていないことが明らかです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-20 02:19 | 医療事故・医療裁判